東京五輪・パラ、石巻圏から[7] 盲目の聖火ランナー

パートナーの盲導犬トラヴィスと走る若山さん

■「一歩を楽しむ石巻」代表 若山崇さん(50)=石巻市桃生町=

<視覚障害者を励ましたい>

 「自分が聖火ランナーとして走ることで、視覚に障害のある人たちが外出するきっかけや励みになってくれればうれしい」

 視覚障害者らで構成する市民公益活動団体「一歩を楽しむ石巻」代表の若山崇さん(50)が、東京五輪の聖火ランナーに一般企業枠で選ばれた。

 若山さんは仙台市出身。実家で自営業を営んでいた30歳前後の頃に「網膜色素変性症」と診断された。15年ほど前、妻の実家がある石巻市桃生町に移り、福祉施設で支援員として働いていた。2012年に急激に症状が悪化。物の輪郭はぼんやり見えていた目が、明暗しか分からない程度まで病状が進行した。

 仙台市の県立視覚支援学校で針治療などを学んだが、目が見えなくなったことを受け入れられず、2年で通えなくなった。「家でふさぎ込むことが多く自暴自棄になっていた。妻や子どもたちが笑顔で接してくれたのが支えになった」と振り返る。

 外出したい気持ちはあったが、行動はできなかった。同校の教諭で白杖歩行訓練士の千葉康彦さん(56)を頼り、生活訓練と白杖訓練を開始。自力で仙台まで通えるようになった。「目が見えなくなったことを受け入れることができたのは、白杖訓練の成果の一つでもある」

 盲導犬のパートナー、トラヴィス(6)と出合ったのは4年前。障害物をよけて歩いてくれるほか、以前と同じペースで歩けるなど安心感があるという。「歩く楽しさをトラヴィスが教えてくれた。大切な家族の一員」と若山さんは笑顔で話す。東京や横浜、岩手など県外を旅行することもある。

 聖火ランナーとして走るのは6月20日。約200メートルの区間をトラヴィスと並走し、妻幸子さん(50)が後ろから声掛けをする。

 ランナーに応募したきっかけは、東日本大震災で被災した視覚障害者を励ましたいという気持ちからだっった。道路や住まいなど環境が大きく変わり、「どこを歩いているか分からず、不安」「社会との関わりが少なくなった」「引きこもりがちになった」という話をよく耳にした。

 「一歩外に出ることは恐怖だった。目が見えていた頃と同じことはできないが、近づくことはできる。外出する、誰かと関わることは楽しいという思いや、家族、団体会員への感謝を込めて走りたい」


2020年01月15日水曜日


先頭に戻る