石巻専大・ソフトバンク産学連携プロジェクト 「知」の可能性、次世代へ

石巻専修大の学生と開発したアプリを確かめる桜坂高の生徒
ビッグデータで把握した人の流れを可視化した画面を見る石巻専修大の学生(右)ら
離任を前に、石巻圏への思いを語るソフトバンク高際さん

 ソフトバンクグループ株式会社の「Pepper(ペッパー)社会貢献プログラム」は本年度までの3年間、石巻圏で展開された。「高大産(高校・大学・企業)連携プロジェクト」を掲げる石巻専修大が同プログラムに参画し、圏域の教育現場で両者連携の事業が繰り広げられた。人型ロボットPepperを中心とした活動は多岐にわたり、東日本大震災からの復興を歩む地域の課題解決へ多くの可能性を芽吹かせた。

 石巻圏域では石巻市桜坂高、石巻商高、石巻工高、石巻北高の4校がPepperを取り入れた活動を実践した。

 このうち、桜坂高は本年度までの3年間、石巻専修大と共にPepperで地域の魅力を発信する「まちなかポスタープロジェクト」に取り組んだ。ゲームを通して石巻の魅力を発信するアプリ「ホヤフラッシュ」は高校生がアイデアを出し、大学生がプログラミングをした。Pepperに装着し、石巻市かわまち交流センターで利用してもらう計画もある。作成過程では広島市の広島商高と交流し、知恵を出し合う場面もあった。

 石巻商高はPepperを活用し、地域課題の解決を目指す。テーマは震災伝承。小中学生を対象としたクイズ形式のアプリを作り、クイズを解くことを通し、震災の体験と教訓を伝えていく試みになる。参加した同校コンピューター部の生徒は「自分と他人の命を守るため、最善の行動が取れるようなアプリを作る」と意欲的だった。

 ソフトバンク株式会社と石巻専修大は昨年1月、石巻市と包括連携協定を結んだ。情報通信技術(ICT)を活用し、教育やスポーツ、観光振興などの施策を推進するのが狙い。最初の実践例として中学校の部活動支援に取り組む。同社の遠隔指導サービス「スマートコーチ」を活用。昨年11月に石巻市山下中の野球部を対象にした活動が始まり、同大野球部の学生がアドバイスしている。

<石巻専修大プロジェクト担当者から>

 ソフトバンク株式会社と展開した石巻専修大の高大産連携プロジェクトは4人の教員が主に携わった。杉田博教授はスマートコーチによる部活動支援を実践。舛井道晴准教授は石巻市桜坂高のまちなかポスタープロジェクトを指導した。佐々木慶文准教授は石巻工高でPepperをコミュニケーションツールとして活用するアプリ開発を担当。高橋智准教授は小中学校などで震災伝承や防災・減災の出張授業を行った。

■部活動支援/学生と中学生信頼関係育む 杉田博教授
 前年度試行での「教える大学生−教えられる中学生」という関係を反省し、本番となる本年度は学生と中学生のマンツーマン体制を基本としました。それにより撮影した動画を見ながらピッチングやバッティングのフォームを2人で確認する様子が見られました。本プロジェクトの目的の一つはコーチング力の養成ですが、そのためには他者とのコミュニケーションとそこから生まれる信頼関係が大切ということを実感したようです。

■まちなかポスター/種まきの3年花を咲かせて 舛井道晴准教授
 3年間を振り返って印象に残ったことは、高校生・大学生の取り組む姿勢の良さです。教員以外の顔触れは毎年変わるにもかかわらず、高いモチベーションを維持して活動を継続できたことは、若者たちの興味・関心を引く要素がこのプロジェクトの中にたくさんあることを示しています。この3年間は種まきの期間でした。これからはもっと多くの石巻の若者たちがこのプロジェクトに参画し、立派な花を咲かせてほしいと思います。

■アプリ開発/先端の技術で活性化の知見 佐々木慶文准教授
 担当したテーマでは、高校生がコンテンツ収集やアプリ開発を行い、大学生が技術的サポートを行う形態で活動しました。高校との連携では多少なりとも困難な点がありましたが、関係者の多大なるご協力の下、双方の強みを生かした取り組みができたと思います。今回の活動では、最先端技術を用いた地域活性化の今後に向けた新たな知見が得られました。参加者の皆さんも個々に得るものがあったようで、これも大きな成果の一つと考えています。

■防災教育/出前授業通し防災意識向上 高橋智准教授
 約450名の小中学生に地域防災を考える出前授業を行うことができました。簡単なプログラミングやクイズアプリを活用することで、災害への備えや発生時の対応について、これまでよりも興味を持って深く学習することができたと感じています。出前授業の運営や防災クイズアプリを作成した高校生と大学生も地域防災に対する理解が深まったとともに、課題解決に向けた自主性や情報発信能力を高める良い機会になりました。


◇ビックデータの活用探る

 ソフトバンク株式会社の関連企業で位置情報のビッグデータを収集、解析する専門会社「Agoop(アグープ)」(東京)は、観光客数などの統計的な実態を把握する製品「Papilio(パピリオ)」の活用策について石巻市や石巻専修大と意見交換した。

 パピリオは同社の位置情報を用い、時間や曜日、月別に人の流れを解析。観光地を訪れた人の居住地を市区町村ごとに可視化する。滞在日数や観光客が次にどこに向かうかなどの動向も把握できるという。

 3者の意見交換は昨年12月にあり、石巻専修大経営学部の渡邊壽大助教は「大型客船が寄港した際、外国人がどこから来て、どこへ行くか現状では把握できない。寄港地ごとの特性が分かればいい」と話した。

 市側は「東日本大震災では交通情報が入り乱れた。リアルタイムで情報が見られれば、情報の正確性を担保できるかもしれない」と期待感を示した。


◇ソフトバンク高際さんに聞く

 ソフトバンク株式会社の社会貢献担当として、石巻専修大と共に石巻市、東松島市との包括連携協定などに携わってきた高際均・地域CSR1部担当部長は2月、広島県に異動する。兼務する公益財団法人「東日本大震災復興支援財団」では女川向学館での中学生向け英語学習プログラムや同大の「復興まちづくり情報交流館プロジェクト」などを支援した。

 これまでの活動を振り返ってもらった。

−どんな視点で活動してきたか。

 「地域活性化と若者育成だ。石巻専修大とPepperを使って地域の魅力や防災教育を発信した。復興を成し遂げ、過疎化に打ち勝つには若者の力が必要。地域唯一の大学である石巻専修大の役割は大きい」

−Pepperや情報通信技術(ICT)を活用した中学校への部活支援などを通し、企業、大学、高校、中学校と少しずつ縦のつながりが生まれている。

 「石巻西高は文科省の『地域との協働による高校改革推進事業』の指定を受けた。石巻専修大が中心になって、石巻西高をはじめとした圏域の全高校と連携し、若者育成に取り組む流れになると面白いと思う」

 「ボランティア的な地域貢献活動にとどまらず、起業に結び付く、経済活動を含めた活動ができれば地域もより活性化するのでは」

−ソフトバンクは毎年100人の被災地高校生を「TOMODACHIソフトバンクリーダーシッププログラム」として米国留学に無料で招待してきた。

 「今年も実施する。その卒業生が石巻市の政策コンテストに応募した。若者の力はすごいと思う」

−石巻圏の復興の現状をどう見るか。

 「心の復興にはまだまだ時間がかかる。震災で受けた苦しみは永遠になくならない。その中でも若者の活動で街が新しく生まれ変わり、その躍動感の中で、少しずつ心のわだかまりが溶けていく場面が出てくることを祈っている」

−活動は幅広かった。

 「『東北絆CUP』では石巻市民球場でプロ野球選手OBを招いて地域交流をしました。絆CUPには野球、バスケ、サッカー、吹奏楽、自転車の各部門で東松島市、石巻市、女川町の中学生にも参加していただいた」

−離任にあたり一言。

 「ソフトバンクは、これからもICTの力を活用し、多様な分野で石巻市・東松島市・女川町の復興支援、若者支援に取り組む。地域の皆さまには、大変お世話になりました」


2020年01月24日金曜日


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