石巻・ヤマニシ、会社更生法申請 経営改革で再建目指す

経営状況などを説明する長倉社長(中央)

 自力での事業再建を断念し、会社更生法の適用を申請した造船会社ヤマニシ(石巻市西浜町)の長倉清明社長が1月31日夜、同社で記者会見した。世界的な造船不況で主力の新造船事業が伸びず、東日本大震災の復旧費用が経営を圧迫したことなど申請に至った経緯を説明。「支援先にこれ以上迷惑を掛けられない。体制をリセットして再生するしかないと判断した」と語った。

 長倉社長は2月中旬を見込む更生手続きの開始を受けて辞任する。今後はスポンサーの支援を受けて事業再生を目指す。再建に向けた提案を既に受けており、4月末をめどに決定する。ヤマニシは新造船、修繕、鉄構造物製造の3事業の継続と従業員150人の雇用維持を要請する。

 震災で本社工場は壊滅的な被害を受け、建造中の大型船2隻も流失した。国や金融機関の支援を受け、2012年夏には建造を再開したが、造船業界の不況で利益が伸びず、14年3月期から5期連続で赤字だった。

 長倉社長は「2008年のリーマン・ショック前は造船ブームだった。がくんと落ちたところに震災が来た」と話した。

 19年3月期は92隻を受注し、売り上げは震災後最高の111億7600万円だったが、財務状況は改善せず、債務超過は約42億円に上った。

 新造船事業は需要が落ち込んだ外航船から貨物船などの内航船にシフトしたが、利益の拡大につながらなかった。震災で設計図が流失したことなどもコストを膨らませたという。

 造船業はすそ野が広く、地域経済への影響が懸念される。工場の構内作業を請け負う地元の協力会社13社には、同日に経緯を説明。長倉社長は「今後も協力すると一致して言ってくれた。そこに不安はない」と語った。

 申請代理人の松嶋英機弁護士は「スポンサーの力を借りて徹底的に経営改革をする。現場の能力は高い。従業員や下請け企業が悲観的にならないよう、実績を作っていく」と強調した。

 ヤマニシは1920年創業で、東北最大級の造船会社。77年にもオイルショックの影響などで会社更生法を適用した。近年は小型漁船の建造で培った技術力を強みに外航貨物船やコンテナ船などに進出し、業務を拡大。ピーク時の2010年3月期は約198億2100万円の売り上げがあった。

「雇用維持、事業継続に全力」

 「会社更生(の手続き開始申請)の判断をせざるを得ず、多大なご迷惑を掛けた。経営者として不徳のいたすところだ」。1月31日、石巻市西浜町の本社で、申請代理人弁護士とともに1時間を超える記者会見に臨んだ長倉清明社長(66)は苦渋の表情をにじませた。石巻地方を代表する創業100年の老舗造船所であっても、造船業界の構造的不況の荒波を乗り越えられない無念さ。「従業員の雇用維持と事業継続に全力を尽くす」と声を振り絞り、地域経済への影響を最小限に食い止める覚悟を示した。

■長倉社長 一問一答

−150人の従業員の雇用はどうするのか。

 「困難な部分もあるが、全社員の雇用維持が最大の願いだ。メインバンクには給料などの資金融資の協力を求めて万全を期す。組織の若返りを図り、社員の平均年齢も下がっている。新卒者3人も内定しているが、若い世代の人材確保の観点からも入社に向けて交渉を進めていく」

−経営者としての責任もある。

 「1977年にも会社更生法適用を申請した経緯があり、はなはだ不徳のいたすところだ。いったんリセットして再生の道を決断した。今後の更生手続き開始の決定を踏まえ代表取締役を辞任する。次世代にバトンタッチして事業継続を図っていく」

−厳しい財務状況だが、東日本大震災の影響が大きかったのか。

 「ピーク時の2010年の売上高は198億円に達したが、津波で施設、設備は甚大な被害を受け、復旧費用は多額となった。さらに運転資金に充てる金融機関からの融資は返済しなければならず、経営を圧迫した。震災以降はマーケットも縮小し、大手造船所にとっても撤退か統合かという話しが出るなど、単独による企業経営は困難な状況だった」

−造船業界の不況もある。

 「オイルショック以降の構造的不況やリーマンショックによる経営環境の悪化は間違いなくあった。特殊貨物船などにシフトせざるを得ず、手が込む建造で受注隻数も伸び悩んだ。設備的な課題もあり、造船業が活発な西日本の大型造船化のブームに乗り切れなかったのも事実だ」

−経営再建に向けた今後の見通しは。

 「新たなスポンサーの決定など再生に向けた動きを加速させる。新造船、船舶修繕、鉄構造物製造の3事業が柱となる。経営的には設備規模に見合った船の連続建造が重要になる。サイズは小さくても数多くこなすことがベターだ。石巻地方には協力企業が13社あるが、一致団結して再生を目指すことで理解を得た。その期待に応えていく」


2020年02月02日日曜日


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