新型コロナ 芝居の面白い街に影 延期や中止も 石巻

プロの役者に中学生らも交じって行われたワークショップ。その後、本公演の中止が決まった=2月15日、東松島市の県松島自然の家

 新型コロナウイルス感染拡大が、芝居の面白い街・石巻に影を落としている。公演の中止や延期が相次いでいる。5年前から始まった「いしのまき演劇祭」も見通しが立たない。先行きが見えない中、表現の世界に生きる演劇人たちの模索が続いている。

 公演が延期となったのが創作劇「里浜のアテナイ」。3月15日本番に向けて東京の劇団と東松島市民が一緒に創るはずだった。2月15日のワークショップには地元の中学生が参加した。作・演出の福島三郎さん(51)=丸福ボンバース主宰=は台本を書くため宮戸島をくまなく歩いた。これら全ての準備が宙に浮いた。

 主催のboxes(ボクシーズ、仙台市)スタッフ遠藤真有美さん(37)は「福島さんはがっかりしていた。延期だが、それが1年後になるかもしれない。大切なのは人の命だけれど、芸術やスポーツができないということは心の栄養を奪われた感じ」と話す。

 石巻市を拠点にする劇団「スイミーは まだ 旅の途中」も活動休止に追い込まれている。いしのまき演劇祭には第1回から参加してきた。代表の町屋知子さん(28)は「7月初めに予定していた公演が難しくなった。発想を転換させて、台本を書く時間ができたと前向きに捉えたい」と語る。

 気になるのが演劇祭の行方だ。「演劇祭が(東日本大震災後の)街に活気をもたらしてきた。コロナが一日でも早く終息してほしい」と願う。

■困難乗り越え再会を(劇団 球主宰 田口萌さん)

 劇団 球(東京都)は2014年から毎年、石ノ森萬画館でミニ公演を開き、東日本大震災の被災地である石巻市を支援してきた。主宰の田口萌さん(54)に今の状況を聞いた。

 都内の稽古場が使えない状態。私たちの公演は7月、萬画館には9月に行くつもりだった。稽古がいつ再開できるのか見通しが立たないので、心がウツウツしている。

 仕事というより好きでやってきた。お金がなくても芝居をやっていることに生きがいを見いだしてきた。こうなってみて初めて役者人生って保障されていないんだな、とも思った。

 半面、自粛が続く中で多くの人が芝居やエンタメ(エンターテインメント)に飢えている。いかに人間にとって生きる上で大切なものであるかを知った。

 劇場という一つの空間で役者と観客が感情を、時間を共有する。今は難しい状況だが、創造的な世界に関わっていることに、一人の演劇人として誇りを持ちたい。

 私自身、家に巣ごもりする日々が続いている。石巻の皆さんもそうだと思う。萬画館で再びお会いできる日まで、この困難を乗り越えよう。


■朗読を配信

 昨年まで演劇祭副代表を務めたのが石巻市出身で、演劇ユニット・コマイぬ代表の芝原弘さん(38)=仙台市=。「直接、集まってミーティングができないので、ネット上で意見を交換している。秋ごろに開催できないか演劇祭の実行委員と検討している」と話す。

 震災の時、東京に暮らしていた。古里支援のために結成したのがコマイぬだった。「あの時は前に進むだけだった。コロナは事情が違う。当たり前に演劇ができる日常の素晴らしさを改めて知った」

 その中で、コマイぬメンバーで、劇団青年団の菊池佳南さん(33)=仙台市=らと、朗読を5月から配信することが決まった。中止している旧観慶丸商店(石巻市中央3丁目)での「月いちよみ芝居」も配信を考えている。

 「伝えられる手段はあるはず。閉じこもりがちな市民に少しでも元気を与えたい」と強調、演劇人として心意気を見せる。


2020年04月19日日曜日


先頭に戻る