震災伝承活動が危機 語り部ツアーや見学キャンセル、運営資金に打撃

石巻市の旧門脇小前で震災直後の様子を学生たちに紹介する佐藤さん=3月12日

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響が、東日本大震災の教訓を語り継ぐ伝承活動にも及んでいる。石巻地方での語り部ツアーや施設見学などのキャンセルは、約3000人に上った。活動の収益で運営資金を賄う団体は、大きな打撃を受けている。

 震災の伝承に取り組む民間連携組織「3.11メモリアルネットワーク」(石巻市)が岩手、宮城、福島3県で伝承に関わる30団体・個人を対象に、3月末時点の活動状況を尋ねたアンケートによると、予約のキャンセルは計9235人(302件)で、このうち石巻地方の9団体・個人が3058人(117件)を占めた。3月の伝承活動への参加者数では、前年と比べ「1割以下」に落ち込んだのが1団体、「1〜3割」に減ったのが4団体あった。

 一般社団法人「防災プロジェクト」(東松島市)代表理事の中井政義さん(55)は、震災の風化を懸念する。震災を体験した「語り部ガイド」として、石巻地方の被災地を案内するツアーを企画。助成金には頼らず、ツアーと講演の収益を活動資金に充てる。毎年3〜10月に約1200人を案内してきたが、4月に実施したツアーは1回のみ。キャンセルは約20件に上り、生活のため前職の広告業を再開せざるを得ない状況だ。

 中井さんは「終息まで耐えるしかないが、伝承活動が止まれば、震災を思い出す人も機会も少なくなる。風化が急速に進むのではないか」と危機感を強める。

 「日和幼稚園遺族有志の会」(石巻市)の佐藤美香さん(45)は、幼稚園の送迎バスが津波と火災に巻き込まれ、乗車していた長女愛梨ちゃん=当時(6)=を失った。県外の学生らの依頼を受け、バスが発見された現場や愛梨ちゃんの遺品を紹介し、当時の記憶と教訓を伝えている。これまでは月に2回ほどの予約があった。3月は6件の予約のうち2件がキャンセルされ、4月は1件の予約があったが3月中にキャンセルされた。今は照会すらないという。

 佐藤さんは「命の大切さを伝える活動だからこそ、今は『来てください』と言えない。フェイスブックでの発信など今できることをして、来てもらえる時期を待つしかない」と話した。


2020年05月05日火曜日


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