石巻ゆかりの本(4) 辺見庸さん「もの食う人びと」

1994年に単行本として共同通信社から出版された「もの食う人びと」

 ヤマト屋書店中里店に入ると、石巻市出身の作家でジャーナリスト、詩人の辺見庸さんの文庫「もの食う人びと」(角川文庫、定価720円+税)が、目立つ場所に積み重ねられている。

 単行本が出たのは1994年。今から四半世紀以上も前になるが、文庫になって読み継がれている。「食」は時代が平成から令和に変わっても人々の関心を奪うことはないようだ。

 単なるグルメ巡りではない。世界の紛争地などを取材してきたジャーナリストが、体当たりで臨んだ「異境の地の食」物語だ。

 「今、何を食べ、考えているか」を求めて、バングラデシュ、旧ユーゴ、ソマリア、チェルノブイリ、ウガンダ、コソボ、択捉と世界各地を歩く。というより彷徨と言った表現の方がぴったりくるかもしれない。

 飢餓や紛争、放射能汚染などが問題になっている地で、現地の人間と共に、辺見さん自らの舌で、胃袋で食する。それは怒りの味だったり、憎しみの味だったり、悲しみの味だったりする。無感動の味さえ体験する。飽食の日本からは想像できない世界の今が見えてくる。

 20年前、東京都内のホテルで、本書がベストセラーになっていることに戸惑いを見せた辺見さん。が、本書で提起した「食」を巡る世界の状況は、21世紀になった今の国際社会さえ照射している。


2020年05月09日土曜日


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