伝承のみらい 3.11メモリアルネットワークの挑戦(2) 連携

3.11メモリアルネットワーク発足が決まった石巻ビジターズ産業ネットワークの第15回コンファレンス=2017年11月、石巻市
石巻地方の伝承関係者が先進地視察で学んだ知恵を持ち寄った第2回コンファレンス。963枚のカードを整理し、「震災学習の共同事業体制を石巻地方でつくる12の施策」が取りまとめられた=16年1月、石巻市

<立場超え、広域組織で発信>

 東日本大震災の「最大被災地」と言われる石巻地方では、2011年当初から、被災した住民による震災伝承が行われてきた。石巻観光ボランティア協会をはじめ多くの団体・個人が活発に活動する中で、伝承関係者の「連携」の動きが生まれたのも、石巻地方の特徴だ。

 他の地域や業界にも通じるかもしれないが、石巻の震災伝承関係者の間でも「縦割り」「ばらばらに活動している」「後継者がいない」といった声が聞かれ、早い時期から、連携の必要性が認識されていた。

 現在、3.11メモリアルネットワークは被災3県を中心に活動しているが、立場を超えた多様な主体の連携、協働での企画や発信、人材育成、公開性や透明性の確保は、この頃から変わらない重要なテーマであった。

 連携の基盤となった「石巻ビジターズ産業ネットワーク」は行政、観光関係者、マスコミ、支援団体などが会員となり、12年6月、交流人口拡大を目的に活動を開始した。

 毎月のように意見交換を重ね、14年から研修やテキスト制作、15年には担い手が集まる「震災伝承コンファレンス」が始まった。

 11人が活動事例を発表したシンポジウムを皮切りに、先進地の中越・神戸視察も実施。参加者からは「伝承に携わる者同士、思いは同じ」といった感想が聞かれ、そこで得られた963個の学びを整理し、今後の報告性が共有された。また各団体・個人の活動の一覧表の共有や、メンバー同士が語り部について学び合う勉強会などを経て、徐々に関係性が深まっていった。15回のコンファレンスに、95人(延べ425人)が参加した。

 17年には、石巻市が震災伝承計画を策定し、中間支援組織による連携の必要性も示される一方で、語り部団体でのプログラム参加者は減少し、活動を継続するための人材や資金確保が難しく、地域全体の課題として対応できる体制が求められていた。

 コンファレンスでも「中越メモリアル回廊」の事例やその「覚悟」を学び、議論を重ねる中で「いしのまき震災メモリアルネットワーク」設立構想が浮上した。

 その後の議論で「いしのまき」から「3.11」に名称を変え、17年11月に「3.11メモリアルネットワーク」設立が承認された。

 新たな方向にかじを切るきっかけとなったのは、連携の未来を探る中で、中心的なメンバーから「石巻だけではない」「より広域で連携を」という声が上がったことだ。また、数十年にわたり伝承を続ける広島や神戸のように「自分が死んでも、次の世代に伝わるように」という思いで、人材育成を柱の一つに据え、「命をつなぐ 未来を拓く」をスローガンに、震災伝承の広域連携組織の活動が始まった。

 最大の被災地となった石巻。大切なものを失った悲しみ、悔しさ、全国からの支援への感謝、だからこそ未来へ伝え継いでいく責務が共有されてきた。

 石巻地方の個人・団体の尽力による地道な活動とその連携が、広域ネットワーク結成の呼び掛けにつながっていった。
(3.11メモリアルネットワーク事務局 中川政治さん、浅利満理子さん)=日曜日掲載=


【3.11メモリアルネットワーク】
 2017年11月に「石巻ビジターズ産業ネットワーク 震災伝承部会」が母体となり発足した。石巻圏域を超えて宮城・岩手・福島を中心とする伝承活動の広域連携組織。3県を中心に全国から個人会員473人、登録団体68団体の参画・協力を得て運営されている。所在地は石巻市中央2丁目8−2。連絡先は事務局090(9407)3125。
https://311mn.org/


2020年05月24日日曜日


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