伝承のみらい 3.11メモリアルネットワークの挑戦(3) 広域

釜石市鵜住居地区で開催された第9回全体会・視察。鵜住居地区で「釜石の出来事」を追体験した=2019年6月
東京電力福島第2原発の視察。3県の伝承関係者が原子炉内部を見学した=20年1月

<県域超えたつながり、力に>

 東日本大震災は10都県241市区町村に被害をもたらし、阪神・淡路大震災の2府県25市町と比べても、かつてないほどの広域が深刻な被害に見舞われた。

 新型コロナウイルスでは新規感染者の増減や感染ルートなどが報道され、リアルタイムで日本各地や世界各国の情報が得られる。だが2011年3月には、情報の途絶で被害状況や大切な家族、知人の安否すら分からない状況であり、福島では東京電力第1原発の水素爆発の事実さえ知らずに避難を強いられるケースさえあった。

 隣の自治体や隣県で起きた当時の状況やその後の課題、あの日の前の教訓を共有することは今も簡単ではなく、自分事として十分向き合えていない面があった。

 石巻圏域での語り部の学び合いを通じ、相互理解の大切さを基盤に据えてスタートした3.11メモリアルネットワークでは、当初から「連携」を方針の一つとしていた。「3.11を掲げる以上は石巻や宮城だけでなく、東北全体でやっていこう」と岩手や福島への訪問活動や説明会を始め、少しずつ会員の輪が広がっていった。

 県域を超えたつながりは、18年12月の役員改選で岩手、宮城、福島3県から理事が選出されたことで大きく進展した。遠距離からの役員が参加しやすいようオンライン役員会を導入して毎月協議したほか、前例のない民間伝承の連携組織のため、年1回の合宿で制度や方向性について真剣な議論を交わしている。

 これらの調整を踏まえて昨年、3.11メモリアルネットワークの初めての県外勉強会を釜石市で実施することができた。当時の中学生に実際の避難ルートを案内してもらうことで「奇跡の出来事としてではなく、普通にあの避難ができたことを学ばなければ」との思いを強くした。事前の防災教育の必要性が実体験を伴ったものになった。

 「私たちが生きている間に津波は必ず来ます」という呼び掛けは津波常襲地ならではで、宮城との違いも学ぶところが多かった。

 福島県でも資料館や福島第2原発(樽葉町、富岡町)の視察、地域の方々との学び合いの機会が実現した。避難指示や除染、避難指示解除に至る暮らしの激変に現在も受け止めきれない声や何十年もかかる廃炉作業を含めた先行きの不透明さに触れることができた。

 岩手、宮城からの参加者も刺激を受け「3.11を伝える中で福島との伝承活動は欠かせない」と、地域を超えて伝承の意味を確かめ合い、支え合っていく必要性を再認識した。

 東北の津波襲来地域の住民だけでなく、原子力災害により全国に散らばった一人一人が「あの日」の教訓と共にある。繰り返し起きる災害で同じ悲しみを繰り返さないためにも、個人の体験を地域全体の知見や文化として、日本全国各地の地域に合った形で浸透させる取り組みが必要だ。

 3.11メモリアルネットワークでは、震災から10年を迎える来年3月21日に震災フォーラムを企画しており、地域の特徴を尊重しながらも東北全体のつながりを力にして発信していけるよう、サポートを継続していく。
(3.11メモリアルネットワーク事務局 中川政治さん、浅利満理子さん)=日曜日掲載=


【3.11メモリアルネットワーク】
 2017年11月に「石巻ビジターズ産業ネットワーク 震災伝承部会」が母体となり発足した。石巻圏域を超えて宮城・岩手・福島を中心とする伝承活動の広域連携組織。3県を中心に全国から個人会員473人、登録団体70団体の参画・協力を得て運営されている。所在地は石巻市中央2丁目8−2。連絡先は事務局090(9407)3125。
https://311mn.org/


2020年05月31日日曜日


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