伝承のみらい 3.11メモリアルネットワークの挑戦(4) 共助

祈念公園と震災遺構の整備工事が進む南浜・門脇地区。追悼行事や伝承活動、杜づくりの活発な市民活動により、年間5万人以上が訪れている=5月8日
訪問者に語り掛ける「大川伝承の会」。関係者の願いが体現される施設が望まれる=2019年5月19日

<遺構、祈念公園 どう生かす>

 東日本大震災後、民間主体の伝承活動が生まれた一方で、行政主導で震災伝承関連施設も整備されてきた。

 2015年から16年にかけ、石巻市復興まちづくり情報交流館や東松島市震災復興伝承館が相次いで開館。震災10年後をめどに、19年には気仙沼や釜石、陸前高田各市で大規模な伝承館がオープンし、20年にも、先月末に開館した名取、いわき両市に続き各地で施設整備が予定されている。

 3.11メモリアルネットワークや民間伝承関係者の間でも各地に公的施設が多数設置予定であることと、その連携の必要はかねてより指摘されていた。

 石巻地方でも、祈念公園や二つの震災遺構の整備が大詰めとなっている。

 岩手、宮城、福島の各県に1カ所ずつ、国営追悼施設を含む祈念公園が建設されるが、国、宮城県、石巻市が整備する「石巻南浜津波復興祈念公園」は14年の閣議決定後、20年度中の開園に向けて工事が行われている。

 震災直後に「津波に負けたくない」との思いで始まった伝承活動や杜づくりが、建設工事中の敷地内で展開されていることが大きな特徴だ。全国でもまれな取り組みで、住民主体の活動を促進する官民連携の先進事例と言える。

 児童・教職員計84人が犠牲になった大川小は、校舎が全体保存され、周囲は公園が整備される。「大川伝承の会」による語り掛けは、建物だけでは伝わらない力を持っており、交通アクセスの不便な場所にもかかわらず、遺構として整備される前から多くのリピーターが訪れる場となっている。

 もう一つ、震災遺構として部分保存される門脇小は、当時の在校児童は山に避難したものの、校舎が津波と火災で被災した。かどのわき町内会長の本間英一さんは「当初は自分の感情だけで解体を望んでいたが、校舎は、自分のためではなく、津波を体験していない次世代が学ぶための場所なんです」と未来を見据えた視点で遺構を捉えている。地域住民や語り部と行政が集って、今後の伝承活動の在り方を継続的に議論する場が必要だ。

 石巻南浜津波復興祈念公園、大川小、門脇小は、既に多くの人が震災学習に訪れる場所となっており、整備完了後には、個人の見学者や修学旅行生など、さらに多くの人が訪れるだろう。そのときに、次世代の命を守るためのメッセージが訪問者の心に届く体制は整っているだろうか。

 災害時には「自助・共助・公助」の全てが必要とされ、「公助」だけでは限界があるように、教訓の継承にも「自助・共助」が必要だ。

 自分や家族に伝え続ける「自助」の伝承の他に、「同じ悲しみを繰り返してほしくない」という語り部や伝承関係者の強い思いが共感を広げ、繰り返し被災地に訪問する人を生み出してきた。それは「共助」の伝承といえる。

 「公助」による伝承施設が核となることで「共助」を促す震災伝承が促進され、継続性の向上も期待される。官民一体で、遺構や祈念公園を生かして地域の力としていくことが望まれる。
(3.11メモリアルネットワーク事務局 中川政治さん、浅利満理子さん)=日曜日掲載=


【3.11メモリアルネットワーク】
 2017年11月に「石巻ビジターズ産業ネットワーク 震災伝承部会」が母体となり発足した。石巻圏域を超えて宮城・岩手・福島を中心とする伝承活動の広域連携組織。3県を中心に全国から個人会員473人、登録団体70団体の参画・協力を得て運営されている。所在地は石巻市中央2丁目8−2。連絡先は事務局090(9407)3125。
https://311mn.org/


2020年06月07日日曜日


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