伝承のみらい 3.11メモリアルネットワークの挑戦(6完) 次世代

東京で開催した「若者トーク」。「あの日にいた場所は違う。でも、私たちは同じなんだ」。地域を超えて思いが交差する=2019年8月
震災伝承活動に関わる若いメンバーが「あの日のいろんなこと」を共有し、未来へ手応えを感じていた=19年5月

<担い手の支えと育成急務>

 3.11メモリアルネットワークは、設立時より「次世代の育成」を活動の柱として掲げてきた。あの震災と同じ悲しみを繰り返さないために「当事者なき後も、案内できる人を育成する」ことが大きな課題として議論されてきたからだ。

 被災時に学生だった若者が「自分たちが直接語れる最後の世代」、「伝えなかったことをまた後悔する、という連鎖を止めたい」と強い思いを持って取り組んでいることも、東日本大震災の伝承活動の大きな特徴の一つだ。

 「若者トーク」の活動を通じて、日頃は話しづらい震災の経験や思いを共有し、地域を超えた理解や新たな気付きが生まれている。

 一方で「故郷や学校のすてきな景色や思い出を伝えたい」、「誰でも語り部になれると伝えたい」といった発言には若者ならではの軽やかさも感じられ、彼らだけが震災伝承を担うわけではなく、私たち自身の目の前にある課題だと気付かせてくれる。

 そんな彼らに、訪問者もメディアも「頑張って続けてください」と声を掛けてしまうが、実は、若者たちが「頑張り続ける」見通しを得ることは難しい。進学や就職により伝承に関わる機会や余裕がなくなり、活動継続を断念した若者もいるのが現実だ。

 「3.11メモリアルネットワーク基金」は、伝承に関わる若い世代の雇用創出も見据え、東北被災地全体の伝承活動を支える助成制度だ。賛同者の寄付によって支えられており、今年4月に13団体が助成事業を開始した。新型コロナウイルスの危機に対しても迅速に対応し、今後のために積み立てられた基金を活用することで12団体の活動がサポートされる。

 伝承活動への新型コロナウイルスの影響を調査したアンケートでは、今年3〜5月の語り部やツアー24団体の参加者は1719人で、昨年実績の26899人に比べて7%に激減していた事実が明らかになった。緊急事態宣言が解除されても訪問者も予約数も回復しておらず、震災伝承活動が「“無くてもいいもの”になってしまうのでは」との切実な危惧がある。

 震災から10年を迎える本年度は一つの区切りではあるが、震災を知らない世代が増える中、伝承が重要になるのはこれからだ。語り部自身には震災のあの日に向き合い続ける大きな負担もあるが、未来の命を救い、来訪者に希望のメッセージを広げてくれる、かけがえのない東北の宝だ。石巻地域から始まった語り部の連携の取り組みが岩手・宮城・福島に広がっており、祈念公園や震災遺構などの施設との相乗効果が期待される。

 震災直後から活動を続けてきた石巻観光ボランティア協会の斎藤敏子会長は「担い手不足が深刻で、次世代の育成が必要」と訴える。震災を経験した私たち一人一人が社会全体として若い世代を支え、育成する構築が急務となっており、若者が「仕事」として継続できる形が理想だ。

 3.11メモリアルネットワークは、これからも命をつなぎ、未来を拓(ひら)く活動を支えてゆきたい。
(3.11メモリアルネットワーク事務局 中川政治さん、浅利満理子さん)


【3.11メモリアルネットワーク】
 2017年11月に「石巻ビジターズ産業ネットワーク 震災伝承部会」が母体となり発足した。石巻圏域を超えて宮城・岩手・福島を中心とする伝承活動の広域連携組織。3県を中心に全国から個人会員473人、登録団体70団体の参画・協力を得て運営されている。所在地は石巻市中央2丁目8−2。連絡先は事務局090(9407)3125。
https://311mn.org/


2020年06月21日日曜日


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