「石巻学」第5号が完成 文学特集、震災後の動きも紹介

詩人の吉増さんを表紙にした「石巻学」第5号

 「石巻と文学」を特集した地域誌「石巻学」の第5号が完成した。石巻を舞台に作家ドリアン助川さんが書き下ろした小説をはじめ、詩人の吉増剛造さんが石巻について語った特集もあり、充実した内容になっている。ページ数も192ページと前号より約40ページも増加。港町・石巻が育んだ文学文化の魅力を伝えると同時に、東日本大震災と文学を考える1冊が誕生した。

 発行したのは「石巻学」プロジェクト(大島幹雄代表)。文学特集にふさわしく吉増さんとドリアンさんが登場。巻頭を飾っているのが「吉増剛造「『石巻』を語る」。吉増さんは昨年夏のリボーンアート・フェスティバルをきっかけに、石巻に足繁く通うようになった。詩人の目が捉えた石巻が語られている。

 ドリアンさんは大島さんと親交があり、小説の依頼を快諾。掲載されたのが「宿題」。ドリアンさんが震災後、門脇地区を訪れていた体験を下に書き上げた短編で、新しい震災文学が生まれた。

 石巻と文人たちとの出合いを振り返ったルポや回想は文学資料としても貴重。(1)結婚したばかりの吉村昭と津村節子夫妻の石巻での行商生活(2)石巻市が生んだ芥川賞作家辺見庸と門脇の思い出−を紹介している。

 高村光太郎や坂口安吾、北杜夫ら石巻地方を旅した作家や詩人は多く、その旅人たちに焦点を当てたのが「紀行文を旅する」。コロナ禍の今、旅の気分を味わえる読み物。紀行文に紹介された石巻の風土や暮らしに思いをはせながら石巻地方の魅力を再発見できる。

 震災後の動きにも着目。短歌集団「カプカプ」の短歌や、中学1年生の少女が亡き姉への思いをつづったメルヘン小説を掲載。第5号は地域から全国に向け発信する文芸誌の一面も備えた1冊になった。

 震災直後、俳句で心に抱いた思いや悲しみなどを表現した女川一中生の9年後を追ったルポや、震災後に読んだ本の中で印象に残った1冊について市民に聞いたアンケートも興味深い。震災を体験した市民や子どもたちに、俳句や読書がどのような役割を果たしたかを考えさせられる。

 代表の大島さんは「日和山にはたくさんの文学碑がある。松尾芭蕉や宮沢賢治、石川啄木ら多くの文学者が訪れ、石巻について書いている。特集は石巻と文学を巡る過去と今がダイナミックに交錯する中身の濃い内容となった。震災と文学の問題にも迫ることができた」と自負する。

 「石巻学」は2015年12月に創刊。これまで「映画」や「鯨」「音楽」などを切り口に、港町・石巻の魅力をさまざまな角度から探り、石巻の文化の奥行きの広さ、深さを発掘してきた。

 第5号は定価1700円(+税)。A5判。こぶし書房(東京都)発売。ヤマト屋書店TSUTAYA中里店などで扱っている。


2020年09月20日日曜日


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