<311次世代塾>第2期 第5回講座 「避難の明暗」テーマに証言と教訓

地震発生から約1時間10分後、築山(中央奥)の周囲に押し寄せた津波=2011年3月11日、仙台市宮城野区(日鉄住金建材提供)

 東日本大震災の伝承と防災の担い手育成を目的に河北新報社などが開く通年講座「311『伝える/備える』次世代塾」第2期の第5回講座が18日、仙台市宮城野区の東北福祉大仙台駅東口キャンパスであった。前回に続き「避難の明暗」をテーマに講師2人が震災時の証言と教訓を伝えた。

◎命を守る訓練生きる 元日鉄住金建材仙台製造所長・平山さん

 最初の講師は日鉄住金建材(東京)の執行役員生産技術部長平山憲司さん(57)。震災時、仙台市宮城野区の仙台港に接する同社仙台製造所の所長だった。
 当時、所内にいた従業員は76人。避難訓練が生き、発生約7分で所内にある高さ10メートルの築山に避難が完了した。8メートルの津波が一帯を襲ったが犠牲はなかった。
 平山さんは「築山で帰りたいという従業員が続出したが認めなかった。だがもっと高い波の襲来や訓練が不十分だったらと想像すると恐怖だ」と振り返った。
 「企業は従業員の命を守ることが第一だ。マニュアルと訓練は重要。マンネリを恐れず、真剣に訓練して改定していく必要がある」と訴えた平山さんは「災害はまた来る。居住地や勤務地の地理や歴史も学んで情報を共有しよう」と力説。「過酷な津波を経験した自分でも当時を忘れつつある。定期的な振り返りが不可欠だ」と語気を強めた。

◎規定の避難でも犠牲 元「リバーサイド春圃」施設長・猪苗代さん

 2人目の講師は気仙沼市の介護老人保健施設「リバーサイド春圃(しゅんぽ)」施設長だった猪苗代盛光さん(70)=医療法人「くさの実会」常務理事=が務めた。当時、施設には職員53人と133人の利用者がいた。津波警報を受けて、全員が施設2階に避難したものの、津波は2階にも押し寄せ、47人が犠牲となった。
 猪苗代さんは「津波が来たというショックで亡くなる人もいた。高齢者を両脇に抱え首まで水に浸かりながら上を目指した。極限だった」と声を詰まらせた。
 避難所に移っても極寒で高齢者の体力は奪われ、避難所や搬送先でさらに12人が亡くなった。猪苗代さんは「2階への避難はマニュアル通りだったが犠牲者が出た。想定外への心構えが要る」と語り、「生き残るための自助、共助の努力が大切。平時から地域や自治体などとのつながりを持っておくべきだ」と結んだ。
 講話後、受講生ら60人はグループに分かれて討論。「改めてマニュアルや訓練の大切さを学んだ。振り返りも重要だ」「避難に支援が必要な方々に寄り添い、横のつながりを大切にしたい」といった意見が出た。

◎受講生の声

<細かい想定重要>
 避難訓練を細かい想定を考えて行うことで、必要な行動が明確になると思いました。状況は違いますが、講師2人の判断はどちらも正しかったのではと感じました。今後は訓練にしっかり取り組みたい。(仙台市若林区・東北福祉大3年・高橋悠莉さん・21歳)

<冷静に判断 行動>
 「もっと別の避難方法があったのではないか」と講師が涙ぐんで話したことが強く印象に残りました。防災士の資格を3月に取りました。災害時に冷静に判断して行動し、人の役に立てるよう学びたい。(仙台市青葉区・東北福祉大3年・佐藤花乃さん・20歳)

<逃げ場 常に認識>
 避難訓練後の見直しが大切だと分かりました。避難に支援が必要な人がいて、手助けすることが多くの命を救うことにつながることも実感しました。「どこへ逃げるか」を常に認識して行動したい。(仙台市青葉区・宮城学院女子大3年・富田あゆみさん・20歳)

[メモ]311「伝える/備える」次世代塾を運営する「311次世代塾推進協議会」の構成団体は次の通り。河北新報社、東北福祉大、仙台市、東北大、宮城教育大、東北学院大、東北工業大、宮城学院女子大、尚絅学院大、仙台白百合女子大、学都仙台コンソーシアム、日本損害保険協会、みちのく創生支援機構。協議会事務局は河北新報社防災・教育室=メールjisedai@po.kahoku.co.jp


2018年08月24日金曜日


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