<震災8年>受けた恩、次の被災地へ カーシェアや特産品フェアで「恩送り」

車を貸し出した西日本豪雨の被災者(左)と握手を交わす日本カーシェアリング協会のスタッフ(同協会提供)
「塩釜みなと祭」会場に設けられた倉敷市の地酒販売コーナー。募金箱も置かれた=塩釜市

 東日本大震災以降も国内各地で自然災害が多発している。2016年4月14日に熊本地震、18年6〜7月に西日本豪雨、同年9月6日には北海道地震が発生し、大勢の犠牲者が出た。避難所や仮設住宅に身を寄せた被災者も多い。東北の被災地はその姿を自らに重ね合わせ、「恩返し」や受けた恩を別の人に送る「恩送り」の活動を展開している。

◎石巻→熊本、岡山 カーシェアが生活再建支える

 震災の最大被災地、石巻市で誕生した車支援の取り組みが全国の災害現場で生かされている。車の無償貸与と共同利用によるコミュニティー支援を2本柱に、一般社団法人日本カーシェアリング協会(石巻市)が事業を展開。石巻から次の被災地へ、経験と恩を送り届ける。
 「被災すると普段以上に車が必要になる」。協会代表理事の吉沢武彦さん(40)はこう強調する。避難所から向かう自宅の片付け。罹災(りさい)証明などの行政手続き。車の買い替えは負担が大きく、無償貸与は被災者の生活再建を下支えする。
 スタッフは大災害が起きると現地に駆け付ける。16年の熊本地震は71件、17年の九州北部豪雨では38件を貸し出した。昨年7月の西日本豪雨の際は行政や業界団体の全面協力を受け、629件に上った。
 無償貸与のモデルは、震災後に石巻市で被災者らを対象に始めた格安レンタカー事業だ。15年9月に宮城県内を襲った記録的豪雨で初めて災害支援に応用した。
 吉沢さんは「車を運んだら被災者が泣いて喜んでくれた」と振り返る。熊本地震でも被災者に車を届け、緊急時支援として定着してきた。
 もう一つの柱となる車の共同利用は、コミュニティー形成が狙いだ。同じ地域の住民間で車をシェアし、高齢者の買い物や通院を別の住民が手助けしたり、利用者同士で旅行に出掛けたりして交流を促す。
 石巻市の仮設住宅で始まり、見知らぬ人が多く入居する災害公営住宅でも効果を発揮した。西日本豪雨で被災した岡山県では2カ所で導入された。今年1月には岡山県などと災害協定を結び、地域との連携強化も進む。
 「東日本大震災規模の災害が起きても車に困らない社会づくりが目標」と吉沢さん。「多くの支援を受けた石巻から他の地域を良くしていく。恩返しをしながらの復興を進めたい」と力を込める。

◎塩釜、松島→倉敷 特産品買って復興支援

 震災の復興支援が縁となり、塩釜市は2013年7月、岡山県倉敷市と「地域間文化交流の覚書」を結び、絆を強める。倉敷市が西日本豪雨に襲われた18年7月には、商業者らでつくる塩釜の逸品PRキャンペーン実行委員会が「塩釜みなと祭」会場に急きょ倉敷市の地酒販売コーナーと募金箱を設けた。
 ジーンズや酒など、倉敷市の特産品フェアの開催を市内で重ねた縁で、すぐに支援に動いた。中西博代表(64)は「震災の時に助けられた。倉敷が困っている時には助けたいと思った」と話す。
 倉敷市と観光交流協定を結ぶ宮城県松島町も18年10月、同市の関係者を「2018まつしま産業まつり」に招いた。初めて物販ブースを出した倉敷市関係者は、観光PRをしながら来場者と親睦を深めた。
 高校生の活動も活発だ。塩釜高生らは同年12月、復興支援への恩返しとして、修学旅行先の神戸市で西日本豪雨と北海道地震の被災者への募金活動をした。


2019年03月05日火曜日


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