<除染土再利用 原発被災地の行方>(上)進まぬ搬出、戻らぬ生活

除染土再利用の実証事業が続く現場。3000ベクレル以下の除染土約700袋分が使われている=南相馬市小高区

 東京電力福島第1原発事故で発生した除染土を再利用する実証事業が、福島県内で計画・実施されている。環境省は安全性を確認した上で公共事業に活用し、将来の最終処分の減量につなげたい考えだ。実証事業を巡り、地域は期待と不安、反発が交錯する。三つの地域を取材した。(福島第1原発事故取材班)

◎消えない仮置き場(南相馬)

 国道6号沿いに黒い袋の山が幾列も続く。南相馬市小高区南部。市内最大規模の除染土仮置き場だ。

<早期解消期待>
 「再利用されれば仮置き場解消が早まる。地域の復興が進む」。地元行政区長の山沢征さん(75)は仮置き場の一角で進む実証事業に期待を寄せる。
 実証事業は、放射性物質濃度が1キログラム当たり8000ベクレル以下の除染土を公共事業に使うため、安全性などを確認するのが狙いだ。
 小高区では2016年12月に始まった。3000ベクレル以下の除染土約700立方メートルを使い、高さ2.5メートルの土手のように造成。17年5月から、周辺の空間放射線量や染み込んだ後の雨水の放射性物質濃度を調べている。
 地元が事業を受け入れた最大の理由が「消えない仮置き場」の存在だ。
 除染土は第1原発周辺の福島県大熊、双葉両町に整備中の中間貯蔵施設に県内各地から運ばれるが、用地確保が遅れているため搬入は住民が期待するほど進んでいない。

<国は成果強調>
 小高区南部の仮置き場も除染土が積まれたまま。3年程度とされた土地の利用契約は今春、延長された。
 「仮置き場の目の前で暮らすのはもうたくさん。元の生活に一日も早く戻りたい」。土地所有者の一人でもある山沢さんは地域の思いを代弁する。
 調査開始から1年余。環境省は実証事業の成果を強調する。
 <空間放射線量は毎時0.04〜0.09マイクロシーベルトと低い値で推移している>
 <放射性物質の雨水への流出も確認されていない>
 同省は6月、今回の手法で「安全性を確認した」と国会に報告。年度内を目標に「手引」を作成して再利用の拡大を目指す。
 除染土はそもそも、30年以内に福島県外で最終処分することが法律で決まっている。ただ、最終処分地の確保は難航が必至。同省は最大約2200万立方メートルを見込む除染土の圧縮に懸命で、再利用を何とか実現させたい考えだ。
 だが、再利用が進むかどうかは分からない。

<実用化不透明>
 公共事業への実用について、南相馬市は「現時点で全く考えていない」(環境回復推進課)と強調。福島県も「コメントできる段階にない」(中間貯蔵施設等対策室)と慎重だ。
 実証事業の受け入れを決めた当時の南相馬市長の桜井勝延氏は取材に「住民のために何をすべきかを考えた。(再利用は)科学的に問題ない」と強調した。
 小高区南部の実証事業で使われた除染土はごく一部にすぎない。住民が強く望む仮置き場解消が一気に進展する状況にはない。


2018年08月02日木曜日


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