養鶏復活へ新会社が操業開始 原発事故で一時全村避難の福島・葛尾

完成したばかりの鶏舎にブロイラーのひなを放す憲司さん

 東京電力福島第1原発事故で一時全住民が避難した福島県葛尾村で、養鶏業の新会社「大笹農場」が操業を始めた。原発事故で、村にあった養鶏農家は全て廃業した。社員として新規就農する2人の若者は「村の養鶏を復活させ、元気を村内外に発信したい」と意気込む。

■10万羽を飼育

 大笹農場は、伊達市の養鶏業高橋良行さん(64)が設立。18日に操業を始めた第1農場は約2600平方メートルの敷地に鶏舎3棟を備える。5月に稼働する第2農場を含め、ブロイラー約10万羽を飼育する。創業資金は農林中央金庫からの出資と国の交付金で賄う。
 設立のきっかけは原発事故だ。かつて4戸あった養鶏農家は、事故による全村避難で全て廃業に追い込まれた。
 高橋さんは技術指導で農家と付き合いがあった縁もあり、更地になった農場跡地に心が痛んだ。「村の養鶏業を再興させよう」と決意し、2017年7月に大笹農場を設立した。
 実務を担うのは2人の息子。長男憲司さん(33)が勤務していた山形県内のスーパーを辞め、妻(33)と長男(2)と共に村に移住。先行して村で養鶏業を営み始めた「伊達物産」の農場で修業を重ねた。次男直樹さん(31)も続いた。
 操業初日にはブロイラーのひな約1万8000羽を鶏舎に運び入れた。原発事故前に村で養鶏業を営んでいた松本光清さん(70)も作業を手伝った。高齢もあって再開を諦めた松本さんは「若い人が葛尾の養鶏業の灯を守ってくれるのはうれしい」と感無量の様子だった。

■帰還増に期待

 原発事故で人口減に拍車が掛かった村は、移住を含めた帰還者をどう呼び込むかが課題だ。
 東日本大震災当時、村には1567人が住んでいた。全村避難を経て大半の地区で避難指示が16年6月に解除されたが、帰還者は20年4月現在で334人。
 原発事故後の転入者を加えても計437人で、村地域振興課職員の北村公一さん(57)は「移住して事業を始める若者のモデルケースになってほしい」と期待する。
 大笹農場は地元の農家から飼料用米を仕入れ、鶏ふん肥料を販売する循環型農業を模索する。
 「牛や羊の飼育で頑張っている若者も村にいる。原発事故被災地から全国に元気を届け、支援を受けた人々への恩返しをしたい」と憲司さん。丹精込めて育てたブロイラーは1カ月後の5月下旬にも初出荷を迎える。


2020年04月22日水曜日


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