<ILC>18年決断政府に望む

すずき・あつと 東北大大学院理学研究科博士課程修了。同大副学長、高エネルギー加速器研究機構長を経て、2015年4月から岩手県立大学長。ニュートリノ研究の第一人者。71歳。新潟市出身。

◎東北ILC準備室長 鈴木厚人・岩手県立大学長に聞く

 岩手、宮城両県にまたがる北上山地が建設候補地の超大型加速器「国際リニアコライダー(ILC)」を巡り、学者らでつくる国際委員会が全長を31キロから20キロに短縮する新計画を了承した。建設費を4割削減でき、実現に向け2018年は日本政府の決断が焦点となる。東北ILC準備室長の鈴木厚人岩手県立大学長に展望などを聞いた。(聞き手は報道部・高橋鉄男、東京支社・片山佐和子)

<標準理論超えも>
 −国際将来加速器委員会(ICFA)が11月、20キロへの短縮を決めた。
 「懸案だった加速器本体の建設費が約8300億円から約5000億円に抑えられる。半分が立地国の負担となる場合、日本は建設期間の10年で毎年200億〜300億円を負担する計算だ。素粒子研究の既存予算などを使い、建設が実現する可能性が高まった」

 −研究への影響は。
 「欧州合同原子核研究所(CERN)が12年に万物に重さを与える素粒子・ヒッグス粒子を発見し、20キロのILCでヒッグスの精密測定をすることの科学的意義が出てきた。ILCによる研究で質量などが分かれば、(最も基本的な理論とされる)標準理論を超える理論への突破口になる」
 「ヒッグス研究は、宇宙にある正体不明の質量の固まりである暗黒物質(ダークマター)の発見にもつながっていく。新計画は加速器の全長の拡張を視野に入れており、研究対象が広がる可能性も担保されている」

<地域創生後押し>
 −日本政府は建設の可否を示していない。
 「ILC国会議員連盟のメンバーが9月、安倍晋三首相に新計画を説明し、首相は文部科学省にしっかり対応するよう指示した。欧州の次期5カ年素粒子物理戦略が議論される18年8月が日本の決断の期限。政府間交渉に向け、議連は年明けから欧州との議員外交を本格化させる。いずれ18年は政府に決断してほしい」

 −東北ILC準備室は設備や研究者の受け入れ態勢の検討を進めている。
 「岩手、宮城両県は世界とつながって地域創生を実現する好機になる。まちづくりのマスタープランを作成中で、近く公表する。良質な研究環境と地域づくりには国のイノベーション特区の認定も必要で、年明けから両県と話をしたい」

[国際リニアコライダー(ILC)]宇宙誕生から1兆分の1秒後を再現できる次世代の直線型加速器。トンネルに設置した超電導加速器で電子と陽電子を衝突させ、生じる粒子を調べる。世界の科学者は2030年前後の稼働を目指す。


2017年12月10日日曜日


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