気になる症状 すっきり診断(6)若者にも広がる味覚障害

イラスト・叶  悦子

◎生活習慣病誘発の恐れ/口腔診断科科長笹野高嗣教授

<異常自覚は少数>
 おいしく食べることは、人生の大きな喜びの一つであり、バランスの良い食事をよくかんで食べることは、心身の健康を支える重要な営みです。それを続けていくためには、丈夫な歯と顎、そして健全な味覚が必要となります。
 わが国では超高齢化に伴い、味覚障害者が確実に増加しています。仙台市内に住む高齢者71人(平均80歳)を対象とした2002年のわれわれの調査では、37%に味覚障害が認められました。驚いたことに、自分自身で味覚異常感を自覚している人はたった19%で、他の人は「自分の味覚は正常」と思っていました。
 さらに、味覚と食欲・体調の関係について12〜13年に調べたところ、味覚が正常な人の96%が食欲良好なのに対し、味覚障害者の43%の人は食欲がないと答えています。また体調についても味覚が正常な人の93%が快調だと答えたのに対し、味覚障害者の45%が体調不良を訴えていました。このように、高齢者の味覚障害は単なる感覚障害ではなく、食欲や体調と深く関係しています。
 一方、若年者にとっても味覚障害は健康と関連する重要なサインです。東北大新入生153人を対象として03〜05年に行ったわれわれの調査では、程度は軽いものの25%に味覚障害が認められ、食に関する意識が低く、バランスの良い食事を取っていない学生に味覚障害が多くみられました。この調査結果から、若年者に対する食事指導(食育)の必要性を感じました。
 味覚障害者は、味が分かりにくいため、より強い味を好む傾向があります。その結果、塩分や糖分を取り過ぎてしまい、高血圧症、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病や肥満につながる危険性があります。

<原因、脳の場合も>
 さて、「味覚は口の中の味蕾(みらい)が感じるのではなく、脳が感じる」のです。つまり、「味覚は味蕾が味を受容し、口腔(こうくう)の感覚、内臓の感覚、嗅覚、さらには気分、感情、記憶などが統合して生じる総合感覚」なのです。したがって、口の中だけではなく、内臓、脳、心理、感覚器などに味覚障害の原因が見つかる場合があります。
 東北大病院では医科と歯科が連携して味覚障害の治療に当たっています。味覚は同じ五感(視覚、嗅覚、聴覚、触覚、味覚)の中でも異常に気付きにくい感覚です。たとえ本人に自覚がなくても、家族の方が味覚障害の症状に気付いたときは、早めに当院を受診されることをお勧めします。


2017年05月17日水曜日


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