気になる症状 すっきり診断(23)赤ちゃんの鼠径・臍ヘルニア 

イラスト・叶  悦子

◎脱腸戻らず血流障害も/小児外科科長仁尾正記教授

 ヘルニアとは、臓器などが本来の場所から脱出した状態を指します。腸などの内臓が太ももの付け根の部分にはみ出したのが鼠径(そけい)ヘルニア、へその辺りの臍(さい)部に飛び出したのが臍ヘルニアで、いずれも腫れた状態になって気付く疾患です。

<腹膜の突起残存>
 鼠径ヘルニアは赤ちゃんに多く見られ、「脱腸」とも呼ばれます。この疾患の大部分は、胎児に存在する腹膜の突起が生後も残存することによって生じます。
 男児では、胎児の腹部にあった精巣が出生前に陰嚢(いんのう)に降りてきます。そのときおなかの内側を覆っている腹膜が一緒に引っ張られてポケット状の突起を作ります。腹膜の突起は通常、自然に閉鎖するのですが、閉鎖せずにこの中に内臓が脱出すると鼠径ヘルニアの症状が出現します。女児でも類似の仕組みでやはり腹膜の突起ができます。
 生まれた後に腹膜の突起が残ると、自然に閉鎖することはないとされています。ただし、腹膜の突起が残っているからといって必ず症状が出るわけではなく、内臓の脱出が生じるのはその一部です。
 ヘルニアがあっても苦痛を伴わず、単に出入りを繰り返すほか、ときに脱出したまま戻りにくくなるケースが見られます。この状態で放っておくと、赤ちゃんは機嫌が悪くなるのですが、やがて内臓が元に戻らず、血液の循環障害が生じる「ヘルニア嵌頓(かんとん)」と呼ばれる状態となってしまいます。この場合は緊急手術が必要となります。通常の手術に比べてリスクが大きいことから、嵌頓が起きる前に手術を行うことが重要です。

<手術に配慮必要>
 鼠径ヘルニアは成人でも比較的頻度の高い疾患ですが、赤ちゃんの手術には成人とは異なる特別な配慮や技術・設備が必要になりますので、小児外科の専門医のいる病院での手術をお勧めします。
 臍ヘルニアは、生後間もなくへその緒が取れた頃に発症します。胎児にとってへそは母親との血液の交換を行う大切な場所ですが、生まれると同時に役目を終え、その後へその緒がくっつていた筒状の臍輪が急速に閉鎖します。これが完全に閉じる前にその隙間から内臓が脱出することで臍ヘルニアが生じます。
 この疾患も赤ちゃんに頻繁に見られます。ただ、鼠径ヘルニアと違って、通常は手術を急ぎません。その理由は、臍ヘルニアでは自然治癒が期待できることと嵌頓が起こりにくいことです。大多数は1〜2歳ころまでに自然に治り、2歳を超えて症状が続くごく少数のお子さんで手術が考慮されます。
 鼠径部や外陰部、臍部には、他にも赤ちゃん特有の外科的な疾患が生じることがあります。気になる点がありましたら、小児外科医をお訪ねください。=


2018年02月02日金曜日


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