気になる症状 すっきり診断(34)においが分からなくなったら

イラスト・叶  悦子

嗅覚障害の原因究明を/耳鼻咽喉・頭頸部外科科長香取幸夫教授

 においを感じる嗅覚(きゅうかく)は体の大切な感覚の一つであり、甘い香りやおいしい匂いとして生活を潤す一方、食べ物が腐ったときのすえた臭いやガスの臭いなど生活での危険を察知する重要な感覚です。私たちがにおいを感じるときには、においのもとであるさまざまな嗅物質が、鼻の前の奥の方にある嗅細胞に到達し、細胞が興奮して脳ににおいの刺激が伝わります。この経路に障害があると、においがしない、弱い、においの種類が分からない、違ったにおいがする、他の人のにおわないものがにおう、などさまざまな嗅覚障害の症状が出てきます。

<薬や手術で回復>
 嗅覚障害の原因として多いものは、風邪などのウイルス感染に続く嗅細胞の障害です。鼻づまりや鼻水などの症状がなくなってもにおいがしない状態が続きます。長引くと治りにくい場合が多く、まだ嗅細胞の障害に対する確実な治療法は見つかっていませんが、漢方薬や嗅覚のリハビリテーションが有効であるとの報告もあり、患者さんと医師との相談の上で治療に取り組みます。
 一方、アレルギー性鼻炎・花粉症・副鼻腔(ふくびくう)炎といった鼻の慢性炎症では嗅物質が嗅細胞まで到達しなくなるとにおいの感じ方が悪くなります。最近では好酸球性副鼻腔炎という難治性のアレルギー疾患による嗅覚障害の患者さんが増えています。これらの鼻疾患では薬や手術の治療により嗅覚が回復することも多く、早い時期から診断と治療を受けることが重要です。

<認知症の疑いも>
 また、頭の外傷、脳の腫瘍、アルツハイマー病などの脳神経疾患、ストレスや心理的な要因でも嗅覚障害の症状が出現します。特に認知症の初期の症状の一つとして、においが分からなくなることが最近では注目されています。
 普段何げなく感じているにおいですが、このように風邪をひいた後や、鼻の病気、さらに脳の病気、認知症の前触れとして嗅覚の障害が起こります。数日たっても「においが分からない」、「においが弱い」ときにはさまざまな病気が隠れていることがあり、かかりつけ医や耳鼻咽喉科医の診察を受けることを勧めます。嗅覚障害のさまざまな原因の中から、その患者さんに当てはまる病気を突き止めて治療を開始するとともに、におわない状態で安全に生活するための支援や精神面でのケアが必要になります。


2018年07月20日金曜日


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