気になる症状 すっきり診断(40)アゴが外れる

◎習慣化しないよう注意/歯科顎口腔外科科長 高橋哲教授

 両耳の前で、口を開けたときに少しへこむところが顎(がく)関節です。側頭骨と下顎骨の間にあり、口の開け閉めや、咀嚼(そしゃく)に関わるとても重要な関節です。今回は「アゴが外れる」、いわゆる「顎関節脱臼」について紹介します。

<大あくびで誘発>
 自身で戻せる脱臼を不完全脱臼といい、戻せないのを完全脱臼といいます。下顎を殴打されたり、限度を超えた大あくび、歯科治療時の大開口でも誘発されます。近年は脳血管障害やパーキンソン症候群などの疾患や複数の向精神薬の服用なども顎関節脱臼の誘発因子としてあげられています。
 顎関節脱臼が生じると口を閉じることができず、嚥下(えんか)(飲み込むこと)ができなくなるため、食事摂取が困難となり唾液がダラダラと出てしまいます。さらにはうまく発音できなかったり、強い顎関節痛を生じたりすることもあります。
 原因にはいくつかありますが、かみ合わせに異常があると顎の周囲の筋肉に大きな負担がかかり脱臼しやすいとされます。関節内には関節円板という「クッション」があり、これが何らかの原因で変形をきたすと脱臼が起こりやすいともいわれています。また顎関節を支える靭帯や腱(けん)が伸びたり、筋肉が疲労したり加齢により衰えると、口を開けた時に下顎を元の位置に戻す力が不足し、脱臼を起こしやすいとされます。
 顎関節脱臼は何度か繰り返すうちにクセになってしまうことがあるので注意が必要です。ひどい場合はあくびや歯科治療のたびに外れることもあり、習慣性顎関節脱臼と呼ばれます。顎関節脱臼がクセになり自身で戻すことを続けていると、次第に戻すことができなくなる恐れがあり、習慣化している場合は放置しないことが大切です。

<状況に応じ治療>
 顎関節脱臼の治療は、まずは徒手的に戻すのが原則です。習慣化していない顎関節脱臼に対しては徒手的に外れた顎を戻し、口を大きく開けないよう、「オトガイ帽」という帽子のようなもので開口を数日間制限します。習慣化している場合はそれぞれの原因に応じた治療を行います。たとえば向精神薬などの内服薬が誘発因子であれば、薬剤の変更や減量を処方医に相談します。また顎関節脱臼の再発目的に手術をすることもあります。最近は寝たきりの高齢者の顎関節脱臼が増えてきています。現在ではこのような患者に対しても状態に応じて治療法を選択することが可能です。病状が悪化しないよう、早期に口腔外科の専門機関を受診することをお勧めいたします。


2018年10月19日金曜日


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