気になる症状 すっきり診断(44)不安、緊張で人前に出られない

イラスト・叶  悦子

◎「社交不安症」の可能性/精神科 松本和紀准教授

 人前で不安や緊張を感じることは、誰しもが経験することです。苦手な場面でも、新たな工夫を試みたり、経験を重ねたりすることで、少しずつ慣れていくことが一般的でしょう。しかし「初対面やあまり慣れていない人と会話する」「人前で発言する」「お店で店員と話す」「人と一緒に食事をする」「人が集まる場所に参加する」などの社会的な場面で、強い不安や緊張が必ず出現し、こうした場面を避けて生活するなど、日常生活に大きな支障が出る場合には、社交不安症の可能性があります。

<うつ病と関連も>
 社交不安症では、苦手な社会的な場面を何度繰り返しても、なかなか慣れることはなく、不安や緊張は改善しません。苦手な場面では、ドキドキと動悸(どうき)が強くなる、顔や体が熱くなる感じがする、汗が気になる、あるいは、言葉が出なくなる、頭が真っ白になって考えることができなくなる、手足が震えるなど、不安に伴う体の症状が出てきます。こうしたつらい体験が、何度も繰り返されるうちに恐怖心が強まり、社会生活にも大きな支障が出てくるようになるのです。
 社交不安の症状は、子ども時代から始まることが多いようです。人前での恥ずかしい体験や、いじめなどのつらい体験がきっかけになる場合もあります。子ども時代の社交不安症は、不登校や引きこもりにつながる恐れもあります。不登校や引きこもりがある場合には、その背景に社交不安症がないかも注意してください。また、社交不安症はうつ病や心的トラウマ、あるいは統合失調症などと関連することがあります。似た症状を示す他の精神疾患との鑑別も必要です。

<治療により改善>
 社交不安症の人は、安心できる人たちの前ではごく普通なことがほとんどです。このため、家族にも問題が見過ごされてしまったり、過小評価されてしまったりすることも多いのです。また、苦手な場面を避けてさえいれば落ち着いていられるので、本人も、単に「自分の性格のせいだ」と思ったり、自分の努力不足だと考えたりして、治療が必要な精神疾患だと自覚しないことが多いのも特徴です。社交不安症のために社会生活がうまくいかず、悩んだ末にうつ病の症状が続くようになり、そこで初めて精神科を受診する方もいます。
 社交不安症では、薬物療法や認知行動療法などの心理療法に効果があることが分かっています。社交不安の症状があり、日常生活にも支障が出て困っているようなら、早いうちから精神科で適切な診断を受け、必要な治療を受けることが役立つでしょう。


2018年12月21日金曜日


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