気になる症状 すっきり診断(49)もやもや病

イラスト・叶  悦子

発作重ねれば脳梗塞に/脳神経外科科長冨永悌二教授

 日本人の死因の1位はがんですが、75歳以上に区切ってみると脳卒中や心臓病などの循環器系疾患、すなわち血管の病気が死因の1位となります。特に脳卒中は、寝たきりの原因として一番多い病気で、今後超高齢化社会を迎えて増加すると予想されています。脳卒中の中で最も患者数が多い脳梗塞は、脳の血管が詰まることによって脳に障害が起こり、手足にまひが残るとか、重症では命を失う場合もあります。動脈硬化や不整脈が原因となるため高齢者に多い病気です。しかし比較的まれですが、子供や若い人が脳梗塞になることもあります。

<脳の血管詰まる>
 子供や若年者の脳梗塞の原因として最も顕著なものは「もやもや病」です。もやもや病とは読んで字のごとく、血管撮影で煙のような「もやもやとした血管」が写ることから東北大脳神経外科の初代教授故鈴木二郎先生により名付けられました。子供だけでなく成人にも起こります。日本人や東洋人に多い病気で、脳に血液を送る幹になる血管(内頚(けい)動脈)が、徐々に詰まっていくことが原因で、脳が血流不足になります。「もやもやとした血管」は、本来血管撮影で写らないような細い血管が血流を補うために発達したものです。
 もやもや病では、興味深い症状がみられます。ラーメンを食べる時に「フーフー」する、あるいはハーモニカを吹いている時など、一過性で半身がしびれたり、力が入らなくなったりします。息を大きく何度も吐くと、血液中の二酸化炭素の濃度が低下します。脳の血管は、二酸化炭素濃度が下がると縮んでしまうという性質があるため、元々脳の血流が不足しているもやもや病では、血管が縮んだ時にさらに脳の血流が減って、脳の働きが悪くなり症状が出るのです。もやもや病ではこのような「一過性脳虚血発作」を繰り返して、本当の脳梗塞になってしまいます。あるいは血流を補うための「もやもやした血管」が破れて、脳内出血をおこすこともあります。

<国の難病に指定>
 もやもや病の原因は不明で、国の難病に指定されています。治療は、血流の不足した脳の血管に、頭の筋肉や頭皮の血管をつないで脳の血流を増やすバイパス手術が有効です。驚くことに頭の筋肉や硬膜そのものを脳の表面に直接接着させるだけでも、これらの組織から脳の中に血管が入っていくので、このような接着手術も行います。将来もやもや病の原因が解明されれば、新たな治療法が生まれるでしょう。また最近研究が進められている再生医療によって、血流が不足してダメージを受けた脳の機能を回復させたり、手術をせずに必要な血管を増やして十分な血流を脳に送ったりすることができるようになるかもしれません。


2019年03月01日金曜日


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