気になる症状 すっきり診断(59)老年症候群

イラスト・叶 悦子

◎危険なサイン見逃すな/加齢・老年病科院内講師 冨田尚希

 がんや脳卒中、心筋梗塞など、自分の年齢で生じることの多い「病気」を知り、その予防や早期発見、早期対応を心掛けることは健康を守るために重要です。65歳以上の高齢期では「病気」を考えることに加え、「症状」を考えることが重要になります。その理由には次の三つが挙げられます。

<「年のせい」禁物>
 (1)病気だけでなく「正常な加齢変化」が症状の発生に関与することが増える(2)一つの症状が複数の原因により生じることが増える(3)病気の症状が典型的なものが減り、非典型的なものが多くなる−の三つです。これら高齢期の症状の三つの特徴を念頭に置きながら、目の前の症状について考えることが大切です。
 高齢期の症状で原因疾患が一見明確でない場合、「よくある加齢変化である」「どうせ治らない」と考え、何ら対策を取らずにやり過ごしてしまいやすい傾向があります。その結果、病気の早期発見・早期介入の機会を逸したり、改善可能な症状がそのままになり、日常生活の制限につながってしまったりする危険性があります。特に「年のせい」という言葉がこの状況を誘発しやすく注意が必要です。
 老年医学の分野では、高齢期に多くみられ、対処せずにいると生活の自立度低下につながり得る症状や症状の組み合わせを「老年症候群」と呼んでいます。例えば「白髪」は加齢とともに増える所見ですが、そのままにしておいても生活の自立度が低下するわけではないため老年症候群には含まれません。「認知症」や最近注目されはじめた「サルコペニア」は老年症候群です。従来、筋肉の病的変化で生じる病気は「ミオパチー」との呼称でまとめられていました。これに対し、病気に限定せず、動かないことにより移動能力の低下、転倒・骨折を招き、生活に制限が生じる可能性が高い筋力や筋肉量の組み合わせの状態をサルコペニアと呼んでいます。

<薬の使用に注意>
 忘れてはならないのが、薬物使用に関連する老年症候群です。これは使用中の薬物の作用に関連した症状(便秘、口の渇き、目のかすみなど)を指します。これらの症状を病気や加齢によると考え、放置・または薬を追加することでさらに問題が悪化し、最終的に生活の自立度低下にまで至ることがあるものです。
 世界保健機関(WHO)は「健康」であることを、単に「病気がないこと」だけでなく「機能的な生活を過ごしていること」を要件として挙げています。病気があるかないか、ということに加え「老年症候群=危険な老化のサイン」がないかも考えてみましょう。


2019年08月02日金曜日


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