気になる症状 すっきり診断(62)繰り返す子どもの腹痛

イラスト・叶 悦子

◎過敏性腸症候群の疑い/小児科臨床准教授 虻川大樹

 中学1年生のAくんは1月から朝食後に腹痛を訴え、下痢でトイレにこもり、遅刻・欠席しがちになりました。3月には軽快し、中学2年の新学期は毎日登校しましたが、5月の連休明けから症状が再び強くなり、登校できなくなりました。かかりつけ医で整腸薬を処方されましたが改善せず、血液検査でも異常なく、「精神的なもの」と言われました。Aくんの腹痛は単に「気持ちの問題」なのでしょうか?

<通学中や授業中>
 子どもの慢性腹痛の9割以上は、臓器の異常を伴わない機能的腹痛です。検査で異常がなければ「精神的なもの」と言われがちですが、最近では腹痛関連機能性消化管障害という概念で説明されるようになりました。その代表的な疾患が過敏性腸症候群(IBS)です。IBSは主に大腸の動きや感覚が過敏となり、下痢や便秘などの便通異常を伴った腹痛を繰り返します。朝、食後に症状が出やすく、通学途中や授業中などトイレに行けない場面、緊張する場面で症状が増悪しやすいのもIBSの特徴です。胃腸の動きは不安やストレスと関連する(腸脳相関)ことから、IBSは心身症(心と身体が関連する病気)と位置づけられています。主要先進国では成人の約10〜15%がIBSをもつといわれますが、小児でも小学校高学年から徐々にIBS症状を呈する子が増えてきます。

<体質による症状>
 治療に際しては、腹痛は「気持ちの問題」ではなく確かに「存在する」こと、重い病気ではなく体質による症状であることを本人と家族に説明し、理解してもらうところから始めます。治療の中心は食事療法、生活指導および薬物療法です。インスタント食品やファストフード、刺激の強い物、炭酸飲料などを避け、食物繊維を多く含む食事を3食きちんと取るように指導します。規則正しい生活、十分な睡眠と休養も重要です。症状が強く、日常生活に支障をきたしている場合は、薬物療法を積極的に行います。
 身体症状に対する不安から登校できない子が多く、リラックスできる長期休みや週末に症状が軽快し、休み明けにまた悪くなりがちです。前述の治療や学校での環境調整により、症状に対する不安が軽快して、登校できるようになる症例も多く経験します。ただし腹痛は繰り返すため、症状にとらわれすぎず、できる範囲で学校生活を送るように助言しています。一方、腹痛が軽快してもなお登校できない場合は心理的要因が大きい可能性があるため、子どもの心の専門家に相談することをお勧めします。


2019年09月20日金曜日


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