気になる症状 すっきり診断(71)肺移植という治療/手術乗り切る体力必要

イラスト・叶悦子

◎東北大病院 呼吸器外科科長・臓器移植医療部部長 岡田克典教授

 臓器移植は「機能不全に陥った臓器を正常な機能を有する臓器と置き換える医療」と定義されます。死体移植(心臓死下、脳死下提供)と、家族などから臓器の一部を提供される生体移植があります。日本移植学会は「生体移植よりも死体移植を推進する」というガイドラインを出しており、国際的にも死体移植が原則となっています。生体移植には臓器提供者(ドナー)の臓器の機能低下や、わずかながら手術に伴う命の危険性があるからです。日本では欧米先進国に比べ死体移植の普及が遅れましたが、2010年の改正臓器移植法施行以後は脳死下の臓器提供数が増えてきており、次第に一般的な医療になってきています。

■肺がんは対象外

 呼吸器外科で行っているのは肺移植です。病気になった片肺もしくは両方の肺を取り除き、ドナーから頂いた肺を移植します。薬物治療などの内科的治療で進行が抑えられず、このままでは生命を維持できなくなるだろうと考えられる呼吸不全の患者さんが肺移植の対象となります。適応となる疾患は間質性肺炎(肺線維症)、肺気腫、肺高血圧症、リンパ脈管筋腫症、気管支拡張症、造血幹細胞移植後肺障害などです。ただし、肺がんのような悪性疾患がある場合は移植の対象となりません。肺移植は大掛かりな手術で、手術を乗り切る体力が残っていなければなりません。そのため年齢制限もあり、日本では死体移植は片肺移植が60歳未満、両側肺移植が55歳未満が対象となっています。

■5年生存率75%

 日本では、東北大病院を含む9施設が肺移植実施施設として認定されています。手術は呼吸器外科医、心臓血管外科医、麻酔科医、臨床工学技士、手術部看護師などがチームを組んで行います。その他、術前・術後の治療を行う内科医、リハビリテーション担当医や理学療法士、薬剤師など、大勢の人たちが治療に関わります。移植コーディネーターが、治療全般に携わりチームのまとめ役を務めるとともに、患者さんの相談相手ともなります。
 肺移植はリスクの大きな治療ですが、急性期を脱すると多くの人は健康な人と同じような生活の質を取り戻すことができます。東北大ではこれまで延べ130例の肺移植を実施しました。5年生存率は約75%、10年生存率は約70%です。全世界の5年生存率は約55%なので、それに比べて成績は良好です。呼吸不全により在宅酸素療法を開始しなければならなくなる場合には、肺移植について主治医に相談してみることをお勧めします。


2020年02月07日金曜日


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