<サイクル未来図 ツール・ド・東北2018>(上)民泊/交流新法を追い風に

これまで宿泊したライダーたちの写真を見る斎藤さん夫妻。「今年も楽しみ」と心待ちにする

 東日本大震災で被災した宮城県沿岸部を自転車で巡る「ツール・ド・東北2018」(河北新報社、ヤフー主催)が9月15、16日に開催される。震災からの復興支援を目的に2013年に始まり、今年で6回目。自転車文化の浸透がさらなる復興を後押しする力になってきただろうか−。「民泊」「外国人誘客」「地域づくり」の三つの観点から現状と課題を追った。(ツール・ド・東北取材班)

 「気の合うライダーたちと乾杯するのが心から待ち遠しい」
 石巻市沢田の自動車販売整備業斎藤伊平さん(63)、洋子さん(61)夫妻はツール・ド・東北の出場者を自宅で受け入れる「民泊」に協力している。初開催の13年から6年連続となり、宿泊者は今年の分を含め延べ23人になる。

<触れ合いが魅力>
 初めは恩返しの気持ちからだった。震災後、会社経営やカキ養殖を公金で支えてもらった。「(原資となる)税金は全国の人からいただいたもの。民泊を通じて誰でもいいから感謝の気持ちを示そうと思った」と夫妻は言う。
 リピーターとなったライダーもいる。今年で3年連続となる札幌市の会社員畠山靖子さん(34)は「実家に帰省する感じ」と話す。洋子さんも「娘が来る気持ち」と歓迎し、交流は年々深まっている。
 民泊の魅力について、畠山さんは「震災当時を知る住民の生の声をじっくり聞くことができた。民宿やホテルにはない触れ合いがある」と語る。
 ツール・ド・東北の民泊は、旅館業法上で「イベント民泊」に分類される。イベント開催時に宿泊施設が不足する地域で、例外的に一般住宅で宿泊サービスを認める仕組みだ。
 ツール・ド・東北の経験を平時の観光客誘致に生かす機運は高まっている。6月に、平時から民泊営業を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されたからだ。

<浸透いまひとつ>
 石巻圏観光推進機構(石巻市)は8月上旬、ツール・ド・東北の民泊に協力する家庭を対象に、宮城県と合同での相談会を石巻市で開いた。ホームステイ型の民泊を推奨し、地元住民との交流を望む旅行客の受け皿として期待する。
 ただ、課題は新法の浸透がなかなか進まない点だ。県の集計(9日時点)では、新法に基づく県内の届け出は31件。うち石巻市内は1件にとどまる。住宅図面など提出する書類が多数必要で、相談会の参加者からは手続きの煩雑さを心配する声も聞かれた。
 推進機構の山内千代文事務局長は「石巻はツール・ド・東北の経験があるため、他の地域より新法が普及する素地はある。少しずつ増やしていきたい」と先を見据える。


2018年08月28日火曜日


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