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<仙台いやすこ歩き>(84)ゼリー/研究生んだ家庭の定番

 街でもなく、海でもなく、畑でもなく、今回は、なんと工場地帯へ。JR仙石線の多賀城駅に降り立ち、いやすこは、仙台新港にあるゼライス株式会社の本社工場にやって来た。
 「ゼライス」。そう、台所の引き出しに1箱あって、特にこの季節、ゼリー作りに活躍するゼラチンパウダーは、同社が開発し、ここで造られている。そのことを知った2人が勇んでやって来たというわけだ。
 通されたのは涼やかな応接室。「子どもの頃、ゼライスを使ってゼリー作りをよくしたの。アルマイトの型でみかんゼリーを作ったり…」と画伯の話を聞いていると、にこやかに入ってきたのが総務部次長の北島一浩さん(49)と、品質管理部技術グループ課長の森美和さん(45)。ゼライスについて、あれこれ教えてくださった。
 「ゼラチンは動物のコラーゲンから作られるのですが、クジラからゼラチンを造ることに成功し、1941年に製造をスタートさせたのが当社の始まりです」と北島さん。当時、捕鯨が盛んだった宮城県。使われずに廃棄されていた部分を何かに利用できないかと始まった研究は、クジラからゼラチンを造り出すという世界初の快挙を成し遂げたというのだ。すごい。
 その後、原料をクジラから陸上動物に代えて研究を進め、豚の皮や骨などのコラーゲンから造る家庭用ゼラチン、ゼライスを開発、販売を開始したのが1953年。
 昭和30〜40年代の子どもたちが、初めて家庭で作られたゼリーに夢中になったのも、ゼライス社さんの研究のたまものだったのだ。
 「昔は熱いお湯で溶かしてから使うものでしたが、今は溶けやすく改良され、温めた果汁などの材料にそのまま入れて使えるようになっています」。確かに、昔はそうだった。
 「ところで、コラーゲンって、あの、お肌にいいコラーゲンですよね」と聞くいやすこに、「そうですよ」と森さんはにっこり。「ゼラチンは高タンパクで低カロリー。そのままみそ汁やコーヒーにパッパッと振り掛けても、気軽にコラーゲンが取れます」。かつ消化も良いとあって、お子さんやお年寄りにも、もってこいだそうだ。
 「でも最大の特徴は、口の中で溶けることです」。同じようにゼリーの原料である寒天は口内温度で溶けないのに対し、ゼラチンは口の中で自然に溶けてしまう。この性質を利用して、コンビニの麺類は流通段階で汁がこぼれないようゼラチンで固めてあり、食べる時、レンジで温めることで液体に戻るのだそうだ。ゼラチンの話に驚きっ放しの2人に、さらに北島さんは「シンクロ(アーティスティックスイミング)の女性の髪を固めているのもゼラチンなんですよ」。2人の「へえ〜」も頂点だ。
 「ゼリーを愛する」から命名されたゼライスをお土産に頂いたいやすこ。帰宅後早速、画伯からイラスト付きで「ゼリー作ったよ」とメールの着信。それならこちらもと、家にあるものでゼリー作り。コーヒーゼリーに梅酒ゼリー、あまりに簡単で楽しくて2色ゼリーに挑戦も、と台所は夏休みの自由研究状態。出来上がりを待ちかねて口に入れれば、ひんやり、ぷるるん。あっ! 本当に溶けていく〜。

◎ゼラチン接着剤にも利用

 「ゼリー」は多くの場合、ゼラチン、寒天、ペクチンなどの凝固する性質を利用して、果汁などの材料を固めた冷菓を指す。語源についてはラテン語の「凍る・固まる」を意味するゲラーレが由来とされる。
 ゼラチンは動物の皮膚や骨、腱(けん)などの結合組織の成分であるコラーゲンに熱を加えて抽出したもので、主成分はタンパク質。精製において純度の高いものが食品や医薬品に使われるゼラチンで、精製度の低いものは日本画の画材や工芸品の接着剤として利用され、膠(にかわ)と称する。
 菓子のゼリーが誕生したのは19世紀初頭のフランスで、著名な料理人で菓子職人だったアントナン・カレームによって考案された。
 日本では一口大のゼリー菓子が戦前から製造されているが、これらは寒天で作られたもの。ゼラチンパウダーの開発以降、家庭でもゼリーが作られるようになり普及した。ちなみにゼリーの1人当たり消費量は青森県1位、岩手県3位、山形県4位、宮城県8位と東北が上位にランクインしている。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。
=次回は8月13日掲載=


2018年07月30日月曜日


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