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<仙台いやすこ歩き>(99)そば粉のガレット/食感と香り新緑に満足

 「ガレットのおいしい店があるって」と画伯からの電話。ガレット? レガッタじゃないし、えーと…。画伯のいやすこ情報に慌てて本を開けば、フランスの郷土料理・菓子で、よく知られるクレープの元。なんとそば粉で作られるという。そのことを話すと画伯も「そば粉って、フランスにもあるんだ」とびっくり。
 ガレットがぐんと身近になったところで、2人はそのお店に向かった。仙台市営バスで八木山方面へ。霊屋橋を渡り、広瀬川沿いの鹿落(ししおち)坂を上る。向山二丁目バス停で降りて、時間があるからとぶらぶら歩いていると、店まで2、3分の間に八光院や、仙台三十三観音の一つ、鹿落観音があったりと、ちょっとした旅気分だ。
 そしてやってきたのは、黒のシックな外観で「蕎麦(そば)・甘味・日用品」を掲げる「鹿落堂」。中に入ると一変して宮城の杉とガラスの爽やかな空間が広がり、窓からの大景観にうわっと心の歓声。旅気分がますます高まってくる。そんな2人を迎えてくれたのが若き店主・兵藤雅彦さん(39)だ。
 鹿落坂といえば、昔から親しまれてきた鹿落温泉が頭に浮かぶ。早速、兵藤さんに親戚か何かのご縁があるのか尋ねたところ「いえ、全くないんです。私は栗原市築館出身で、大学の時から近くに住んでいて、広瀬川の流れやそこを訪れる鳥たちなどの自然の風景が好きだったんです」という。
 この地への思いの深い兵藤さんから、鹿落坂の意味を教えてもらう。鹿が落ちるほどの急坂のこととばかり思っていたら、「昔、たくさん『鹿が居(お)る坂』から『鹿が落(お)る坂』になったそうですよ」。
 そばの道に入ったのは岩出山で食べたそばに感動したのがきっかけで、通いながらそば打ちからガレット作りまで教えてもらったそう。
 店を開くことになって、東日本大震災で惜しまれながら閉館した鹿落温泉のことが心に浮かび、そして直接会ってお願いして、この地でのオープンをかなえたという。
 奥に置かれたまきストーブ、その近くのテーブルに座る。眼下には新緑に縁どられた広瀬川の流れと仙台市街の眺望。なんて爽やかな景色、仙台もいいもんだなぁと改めて思っていると「この景色も楽しみながらゆったりした時間を過ごしていただければと思っています」。兵藤さんのそんな思いがつまった店はこの4月でちょうど丸2年になったそうだ。
 厨房(ちゅうぼう)でそば作り、ガレット作りを見学させてもらった。そばは大崎市鳴子の川渡産で、それをひく石臼は栗駒山の安山岩でできている。そば粉を水で溶きグリュイエールチーズ、ゲランドの塩、ワイン、発酵バターを加えて1日寝かせた生地を、円形の焼き器の上で回しながらのばし、焼けてきたところで卵をぽとん。さらに、ベーコンときのこなど具材をのせ、生地を正方形に折り畳んでいく。香ばしい香りがたまらない。出来たてをいただけば、パリッ&しっとりの中においしさがぎゅっと詰まって「満足感ある〜!」「オシャレだけじゃないね」と、フランス生まれの本格的なそば粉料理に、旅気分も最高潮。
 ガレットと仙台のいい景色を、また味わいに来よう。「今度はそばもいいね」と店を後にした。

◎仏が発祥地クレープの元

 ガレットとは、フランスで平たくて薄い円形の料理・菓子の名称。フランス北西部ブルターニュ地方が発祥の地で、クレープの元である。ブルターニュは、やせた土地で冷涼な気候だったため小麦が育たず、地味に乏しい土地でも育つソバが適した。中国原産のソバがこの地に伝わったのは11〜13世紀のことで、イスラム諸国を経由して十字軍によって持参されたとされる。
 そのそば粉と水などで作られていたものが、ガレット。のちにそば粉から小麦粉に変わり、牛乳やバター、砂糖などが加えられ、クレープと呼ばれるようになるが、ブルターニュで生まれ伝えられてきたそば粉のクレープは今もガレットと呼ばれ、主に食事として食べ続けられている。
 ちなみに、宮城県におけるそば粉を使った郷土料理には、黒川郡の「そばねっきあ」、白石市や蔵王地方の「そばねり」、仙台市定義地方の「そばきり」がある。
(参考資料 磯貝由美著「ガレットとクレープの本」グラフ社)

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2019年05月13日月曜日


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