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<仙台いやすこ歩き>(119)新茶/若葉香る爽やかな風味

 ちょっと目を離していたすきに、若葉は青葉へ。「この季節だとそろそろ出るんじゃない!?」と、2人は久しぶりに街中で待ち合わせた。場所は青葉区国分町虎横で、移りゆく街並みの中にあって凛(りん)とたたずむお店、「芭(ば)蕉(しょう)園茶舗」。今日の目当ては新茶だ。
 のれんをくぐれば、画伯はもうお茶のおもてなしを受けている。吸い込まれるように隣に座ると、目の前にすっと出されるお茶。若葉を溶かしたような色、口に運べば、香りとともに爽やかな味がすぅーと体に流れてくる。「ねっ、いつも飲んでいるお茶と別物でしょ」と画伯。確かに!
 早々にお茶の洗礼を受けたいやすこの前に、にこやかに現れたのが芭蕉園取締役の関裕美子さん(36)。何と15代目だ。「創業は元禄元年で、5代将軍綱吉の時代です」。創業時は米問屋で、茶舗となったのは昭和16年。「元禄から令和までの元号を数えたら29あったんですよ」。そんな話をする裕美子さんの隣で、お母さま・清子さんが穏やかにほほ笑む。お2人にお茶のいろいろを教えていただく。
 「お茶も農作物です。お茶農家、製造問屋、茶舗が同じ方向を向いていることが大切で、みんなでいいお茶の提供に心を注いでいます」。農家さんとのお付き合いも長く、年間通して茶畑に足を運ぶのだそうだ。お茶農家から運ばれてきたお茶を、一年間おいしく飲んでもらえるようにと火入れをし、保存、包装などして販売するのが茶舗であり、火入れは先ほどお茶で迎えてくださった裕美子さんのお父さま・関孚(たかし)さん(芭蕉園代表取締役)が行っている。
 「新茶は爽やかですし、秋は香ばしさが出てくるし、どの季節もおいしいです」と話す裕美子さんは新しい挑戦にも情熱的。妊娠中でも安心して飲めるお茶を農家さんと開発したり、長引きそうなマスク生活のためにマスクの中に挟むお茶パックを作ったり。「お茶は抗菌・抗臭効果も高いですから」
 元々お茶は薬として中国から渡ってきたといった話をしていると、お父さまが創業当初の茶袋を持ってきてくださる。「茶養生仙薬也延齢妙術也 芭蕉園」の字。この茶袋は常連のお客さまが持ってきてくれたという。代々のお客さまもいるし、最近はお茶を知りたいと来られる若いお客さまも増えているそうだ。
 「初心者の私たちにも教えてください」といういやすこに、「お茶は繊細です。形ではなく、大切な人を思って丁寧に入れてください。それと、産地も種類もいろいろあるので、飲み比べて自分の好みを探すのも楽しいですよ」と話しながら、手本も見せてくださる。目の前に置かれたのはコーヒーカップとドリップ式の玉露茶。さましたお湯をゆっくり注ぐ。本当にゆっくりで、2、3分だろうか。口に含めば、まろやかで優しい甘みが口に広がり、添えられた干菓子と共にいただけば、何という充足感!
 店先ではお店の若い人が夕方の掃き掃除を終え、水をまいている。330余年変わらない商いの営みを見ながら、すっかり癒やされた2人はすがすがしい気持ちで帰路についた。

◎おぼえがき/中国原産 平安期に日本へ

 お茶の原産地は中国の雲南省。雲南省にはお茶の原木「茶樹王」をはじめとして樹齢1000年以上の樹々が生息しているといわれる。
 日本茶は世界でも類を見ない独自の発展を遂げてきているが、最初に中国から持ち帰り飲んでいたのが最澄や空海で、805年ごろ(平安時代)。さらに1191年(鎌倉時代)に栄西禅師が茶種を持ち帰り、お茶を飲む習慣を広め、日本最古のお茶の本「喫茶養生記」を著す。ここでは、お茶は万病に効き長生きできると記されている。
 今日では、お茶には高血圧などの生活習慣病の予防になるといわれるカテキン、老化予防や美肌に効果があるといわれるビタミン類のほか、ミネラルなども豊富に含まれるといわれている。またお茶の抗菌効果は風邪の予防にもいいとされる。
 ちなみに、茶舗とは、お茶農家からの荒茶を選別し、お茶の香味を引き出すために火入れをしたり、保存したり、細かい作業を行い、商品となったお茶を売るところである。
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 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2020年06月08日月曜日


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