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<仙台いやすこ歩き>(122)玄米カレー/自然の甘さ 体に優しく

 「みぃさんは玄米とか食べてる?」「ううん、画伯は?」。バテる・だるい・アッチッチ気味のいやすこは、しばし沈黙した後、元気になるものを食べに行こうと歩き始める。向かった先は仙台市青葉区一番町の「文化横丁」で、入り口角にある「カレーショップ酒井屋」。玄米ごはんのカレーのお店だ。
 2階に上がる入り口には写真入りメニューがずらり、どれも元気が出そうだ。店内にはどくだみ茶のポットサービスが置かれ、本棚には健康に関する書籍が並び、興味しんしん。ランチのお客さんがとぎれたタイミングで、店主の酒井純一郎さん(54)にお話を伺うことに。
 お店の歴史は昭和39(1964)年、東京オリンピックの年に始まる。それまでサラリーマンだった酒井さんのお父さんが、これからは食べ物産業の時代だ、と店を開いた。「料理の経験はなく、だしの取り方は中華料理屋さんから教わったそうですよ」と酒井さん。メニューはカレーライス、ドライカレー、ハヤシライスで、お客さんは学生さんが多かった。当時、東北大の片平キャンパスで学ぶ学生さんの通学路でもあった。「向かいには松竹や名画座、隣が丸善だった」という酒井さんの話に、思い出話の花が咲く。
 カレーのバリエーションは増えていったが、その味見役はお客さんであり、バイトでもあった学生さんだったそうだ。太白区の向山に分店を開店後、お父さんが脳梗塞を発症し、そのことが玄米カレーを始めるきっかけとなった。病気の治療・予防には食事を正していくことが重要という森下敬一医学博士の「自然医食療法」に出会い、先生の下で玄米菜食の良さを学び、玄米カレーを登場させる。
 学び始めたのはお父さんだったが、もともと自然農法に興味があって山形大農学部で学んだ酒井さんは、一緒に学んで玄米カレーを作っていった。「玄米カレーを始めた時、ほとんど注文はなかったです」。確かに、40年前では難しかっただろう。
 「人間の体は植物と同じ。植物は根っこから堆肥を吸収し、人間は腸から栄養を吸収します。人間の根っこが腸だとしたら、堆肥は必要な栄養全てが入った玄米、それと旬の野菜・ソバ。正しい食事は免疫力を高めてくれる。調子が悪いと思ったら、このような食事に変えるといいですよ」
 早速、いやすこは玄米やさいカレーとオリジナルの100%ニンジンジュースを注文。カウンター越しに受け取ったカレーはタマネギ、カボチャ、ニンジンが大ぶりでやわらかく、かつ甘〜い。自然の甘さだ。八穀ブレンド玄米も、圧力鍋で炊いているので食べやすい。人生初で頼んだ特辛だったが、全く大丈夫なのは、体にいいものばかりが入っているからだろう。野菜の仕入れは、近くのいろは横丁の八百屋さん。そんな話の時に、いろは横丁の和食の「すけぞう」のご主人も食事にやってきて、「もう40年来てるよ」と話す。
 階段を下りながら、酒井さんの「何が幸せか、おいしいか。それはおなかが空いた時に食べることだよ」のひと言を思い出し、「学ばせてもらったね」と、うなずき合う二人である。

◎主食として優れた栄養価

 米は穀類の一種。穀類は世界中で食べられているが、多くの国では粉状にしてパンや麺を作るのに対し、日本などでは粒のまま煮炊きして食べるという特徴がある。
 日本で白米を食べるようになったのは明治以降。それ以前、米は貴重品で上流階級の食物であり、庶民は五穀豊穣(ほうじょう)の言葉もあるように、ヒエ、アワなど雑穀が中心だった。
 玄米とは、もみ殻だけを取り除いた精白していない米である。玄米一粒を見てみると、胚芽、胚乳、ヌカからできていて、胚芽には粗脂肪、粗たんぱく、各種ビタミンやミネラルなど、胚乳には主に炭水化物、ヌカには繊維質やレシチンが多く含まれる。
 玄米のほとんどを占める炭水化物は、ブドウ糖に変化して全身で燃焼してエネルギーとなる。炭水化物がスムーズに吸収されて効率よく燃焼するためには、ミネラル、ビタミン、酵素などの成分と結びつくことが必要であり、それらを含んだ玄米が主食として優れ、ほぼ完全な栄養食といわれるのはそのためだ。

 土地には、その土地ならではの食があります。自他共に認める「いやすこ(仙台弁で食いしん坊のこと)」コンビ、仙台市在住のコピーライター(愛称「みい」)とイラストレーター(愛称「画伯」)が、仙台の食を求めて東へ、西へ。歩いて出合ったおいしい話をお届けします。


2020年07月20日月曜日


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