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<回顧3.11焦点>薬の備蓄ミスマッチ 災害時は外傷想定→実際は高血圧など慢性疾患用が不足

在庫を運び出すバイタルネットの社員ら=2011年3月25日、宮城県名取市の同社物流センター

 東日本大震災の津波被災地では、高血圧や糖尿病など慢性疾患用の薬不足への不安が広がった。災害時用の備蓄や救援物資は、主に外傷を想定した医薬品だったためだ。持病を抱える高齢者の多い地域を襲った巨大津波は、医薬品備蓄の在り方にも課題を突き付けた。(高橋公彦)

<利尿剤注文10倍>
 「外傷薬より高血圧などの薬の注文が多かったのは、想定外だった」
 医薬品卸の東北最大手、バイタルネット(仙台市)の一條武営業本部長(51)が振り返る。2011年3月に同社が受けた注文で最も多かったのは、主に血圧を下げるために使われる利尿剤で、前年同月に比べ10倍になった。
 高脂血症や胃潰瘍の薬を求める患者も多く、震災後に薬局を訪れた人の大多数が慢性疾患の薬を必要としていた。
 宮城県は1997年、県医薬品卸組合と災害備蓄協定を締結。52品目を加盟各社で分担して備蓄し、災害時に供給することにしていた。

<在庫では賄えず>
 備蓄品目は毎年、見直されていたが、協定に基づいて各社が備蓄していたのは包帯や外傷薬、解熱剤、麻酔剤など。慢性疾患用の薬はほとんどなかった。高血圧患者が利用する薬は降圧剤の1品目だけ。糖尿病患者向けのインスリンは含まれていなかった。
 被災を免れ、診察、営業を続けている病院、調剤薬局には、常用する薬を失った高齢者らが殺到したため「平常時の在庫では、とても賄いきれない状態になった」(一條営業本部長)。
 バイタルネットの東北の36支店は1支店当たり平均約12日分を保有しており、当初はその在庫を放出した。

<品目の精査検討>
 同社は震災当日から社員を病院や薬局に派遣。薬の注文を聞いて、支店から各医療機関に薬を配る作業を続けた。宮城県薬務課にも震災翌日の2011年3月12日から4月9日まで社員2人を常駐させ、薬務課に寄せられた注文を卸組合に伝え、被災地の病院、薬局に供給した。
 同社によると、3月13日にはメーカーから薬が入り始めたものの、各支店の在庫量が震災前の水準に回復するには、さらに約10日間を要したという。
 一條営業本部長は「在庫状況から見て、慢性疾患の薬も何とか供給できる量はあったと思う。だが、特にインスリンは糖尿病患者に不可欠で、備蓄の見直しは必要になる」と考えている。県薬務課も「震災の経験を基に備蓄品目を精査し、慢性疾患の薬を増やす方向で検討したい」と話している。=2012年2月21日河北新報
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 東日本大震災の直後から、被災地で暮らす市民の課題を取り上げた河北新報連載「焦点」。震災7年の節目に、発生翌年までの主な記事をまとめました。
=肩書や年齢は掲載当時のものです。=


2018年03月11日日曜日


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