あの日から

復興再興

復興の歩み

避難所の間仕切りは「軽い素材」で「高さ工夫」「安心提供」

西日本豪雨の避難所で設置された高さ2メートルの間仕切り=7月、岡山県倉敷市(ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク提供)
東日本大震災で配布された高さ1メートルの間仕切り=11年4月、石巻市(今野さん提供)

 災害発生後、多くの被災者が共同生活する避難所で、一定のプライバシーを確保するために紙製の間仕切りが大活躍している。東日本大震災後も熊本地震や西日本豪雨で導入され、軽くて丈夫な紙製品の特徴を生かし、被災者のストレスを和らげる工夫が随所に見られる。

■大きい空間も確保可能/紙製パイプとカーテンで個室

 世界で活躍する建築家の坂茂さん(61)が代表を務めるNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(東京)は、紙製のパイプを組み合わせて作る間仕切りセットを避難所に無償提供する活動を展開している。
 1セットは2メートル四方で高さも2メートル。紙製パイプを柱と梁(はり)に使い、梁に木綿布を通してカーテンとして利用する。四方のカーテンを閉めれば周囲から遮られた個室ができ、プライバシーを確保できる。セットを複数つなげれば、大空間を確保することも可能だ。
 活動は2004年の新潟県中越地震を機に始まった。当初は厚いボードで囲うタイプだったが、開放感や組み立てやすさを考え、東日本大震災で現在の形に落ち着いた。
 震災では東北などの避難所50カ所に1795セットを設置した。16年の熊本地震は37カ所1989セットとなり、提供数は増え続けている。今年も西日本豪雨、北海道の地震で活動。累計141カ所、5548セットを数える。
 坂さんによると、活動当初は「前例がない」「避難者の管理がしにくい」と地元自治体から断られるケースも多かったという。次第に「落ち着いて寝られる」などと評判が広まり、現在は4府県・全国12市区と災害時に提供する協定を結んでいる。
 坂さんは「実績を積み、理解が広まってきた。全国各地の自治体と協定を結びたい」と話す。

■余震を背想定し壁1メートルに/強化ダンボール ヘアピンで連結

 一方、あえて高さ1メートルの間仕切りを提供してきた企業が石巻市にある。同市桃生町の梱包資材会社「今野梱包」だ。
 今野英樹社長(46)は「災害時に強化段ボールを何とか役立てたい」と震災前から考え続けていた。中越地震などで避難所がすし詰め状態になり、車中泊でエコノミークラス症候群になる被災者のニュースが頭に残っていたという。
 震災発生後の11年3月、間仕切り用に縦1メートル、横幅2メートルの強化段ボール4000枚を石巻市内の複数の避難所で配った。ヘアピンで連結できるなど簡単に設置できるのが利点の一つだ。
 高さが1メートルあれば、座ると周囲の視線は気にならない。今野さんは、当時頻発していた余震を踏まえ、逃げようと立ち上がった時に周囲が見えないとパニックになると判断。「高さ1メートルでは低い」という声はあったが変更しなかった。
 避難所は大勢の人が出入りする。「高い間仕切りでは避難所が巨大迷路のようになり、盗難などが起きやすいのではないか」と今野さん。更衣室は間仕切りとは別に設置した。
 現在も、間仕切りを直ちに供給できる体制を取る。今野さんは「日常の中にアイデアがあった。今後も人の役に立つ活動を続けたい」と話した。

(2018年11月11日朝刊掲載)


2019年10月15日火曜日


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