うたの泉(976)みづからを家ごと運ぶ蝸牛なり さがせばキチンのケトルを攀る/三井ゆき(みつい・ゆき)(1939年〜)

 「蝸(か)牛(ぎゅう)」はカタツムリ。カタツムリの動きをユーモアたっぷりに捉えた歌です。それに比べて人間は家ごと運べず、家に振り回される生き方をして、何とも不自由な生き物ですね。「攀(よじ)る」はよじのぼる。カタツムリを探しているとケトルをよじのぼっています。急がず焦らず、ゆっくりした動きを見つめる作者の優しいまなざし。励ましの声も聞こえてきそうです。「キチン」というレトロな表記と語の響きもこの歌には合っていると思いました。
(本田一弘)


2019年06月26日水曜日


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