うたの泉(982)七月の海にゆかむとうながして 麦藁帽子かぶらしめたり/篠弘(しの・ひろし)(1933年〜)

 忙しくて会うこともままならなかった2人。彼が言います。「7月の海に行こうよ」。おどけて、部屋の中で彼女に麦藁(わら)帽子をかぶらせました。はにかみながら笑みをこぼす彼女。そんな場面が立ち上がってくるようなドラマチックな一首だと思いました。「海」「ゆかむ」「うながして」のウ音の響きが2人の間のぎこちなさを象徴しているようです。歌集では<手を取りて海をめがけて駈け下りし水面あまねく光る夏空>という歌が続きます。(本田一弘)


2019年07月03日水曜日


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