うたの泉(990)露地裏に夕顔咲かせて前の世は 小さな無口の婆さんであつた/河野裕子(かわの・ゆうこ)(1946〜2010年)

 夕顔は白くて大きめの花を咲かせます。路地裏に咲いていたのでしょうか。そこにはおばあさんが座っていて、静かな存在に懐かしさと親しみを感じたのでしょう。自分もそのようなおばあさんになりたい。その思いがおばあさんに自分を重ね合わせることになったのです。「前の世」はこの世に生まれてくる前のことで、仏教の考え方にあるものです。路地裏という庶民の生活の場と夕顔の花から『源氏物語』に描かれた場面も思い出します。
(梅内美華子)


2019年07月12日金曜日


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