うたの泉(1111)冬の雨磧の石の一つづゝ うるひてぬれぬ茜の色に/室生犀星(むろう・さいせい)(1889〜1962年)

 「ふるさとは遠きにありて思ふもの/そして悲しくうたふもの」。「小景異情」で知られる作者は少年時代、短歌をよく雑誌に投稿していたようで、この一首もそうです。金沢市出身。冬の雨が磧(かわら)の石の一つずつに潤ってぬれていたよ、茜(あかね)の色に染まりぬれていたよ。金沢特有の初冬の趣深い風景を丁寧に見つめて見事に歌われていると思います。「小景異情」は七五調の文語詩。少年の体には五・七・五・七・七のリズムが刻み込まれていたのです。
(本田一弘)


2019年12月04日水曜日


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