うたの泉(1382)柿の実が柿の甘さに辿り着く 時間(とき)の豊かさよ日当たりながら/武下奈々子(たけした・ななこ)(1952年〜)

 秋の味覚の代表である柿を詠んだ感性豊かな一首。柿をはじめ果物は日の光を浴びつつ時間をかけてゆっくりと甘くなります。一朝一夕に甘くはなりません。柿の実が柿の甘さに辿(たど)り着くためには「時間」が必要なのです。これは柿だけの話ではないでしょう。人の生き方までもこの歌は暗示しているのではないでしょうか。豊かな時間があるからこそ私たちの人生という果実も甘くなるのです。せかせかと急ぐことはないのです。歌集『不惑の鴎』より。(本田一弘)


2020年10月17日土曜日


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