<NPOの杜>問い掛け 子の心を育む/STORIA

昨年10月の子どもカフェの様子

 東日本大震災の被災者を支援している現場では「今後どんな暮らしをしていきたいか」という意思決定は、震災後の混乱もあり、多くが大人に委ねられ、被災した子どもの意思はどうしても後回しになった感があります。
 子どもを巡っては、いじめや不登校、虐待など悲しい出来事も続きます。報道では、学校、専門機関、保護者の対応は取り上げられますが、やはり当事者の子どもたちの思いを知る機会はほとんどありません。
 こうした子どもたちの意思を一番に考えている団体が仙台市にあります。NPO法人STORIA(ストーリア)は「やりたい」という気持ちを大事に、自己決定力を育てていく活動をしています。
 昨年10月に市内で初めて開催した「子どもカフェ」は、子どもたちの「お店をやってみたい」という思いを生かした企画でした。普段からSTORIAを利用する10人ほどの小学生がケーキなどを販売。製造から接客、経理、売上金管理まで、みんなが役割分担しました。
 そこには同時に、子どもたちの思いに根気強く寄り添い、対話を重ねるスタッフの皆さんの姿がありました。
 STORIAは市内で、子どもの居場所づくりや食育活動、学習支援などを行っています。目指しているのは、経済的な困難さを抱えた家庭の子どもたちが、生き抜く力を育む環境づくり。「自己肯定感」が生き抜く力の基盤になると考えて活動しています。
 自己肯定感とは、どんな状況でも「自分は大切な存在」と思える感覚。それはどうしたら育まれるのでしょうか。STORIAは「あなたはどうしたい?」と問い掛けることを大切にしています。
 「自分はどうしたいかが分からない子どもが多い。『あなたはどうしたい?』と聞かれる機会が今の社会ではとても少ないから」と、統括マネージャーの富樫絵美さんは言います。
 逆に「どうしたい?」と根気強く問い掛け続けることで「自分はこう思う、こうしたい」という心の願いが生まれます。それを否定せずに受け止めてくれる環境があると、だんだんと安心して自分の思いを発信してくれるようになります。
 さらに大切なのは、発信した思いを形にしようと自ら小さな一歩を踏み出した時。その一歩を見逃さず褒めて認めてあげることです。結果がどうだったかよりも、一歩こそが尊く、将来を生き抜く力の源となります。
 STORIAは子どもたちの小さいけれど着実な変化を保護者に伝えています。子どもの成長を伝えることで、自分も肯定されたと感じ、親自身と家庭環境も変わっていくそうです。「親との会話が増えた」と話す子どももいるといいます。
 「子どもから家庭へ、家庭から地域へと少しずつ『自分はどうしたいのか』を安心して共有でき、認め合える環境づくりを進めたい」と富樫さん。さざ波がいつか大きなムーブメントになることを信じています。
 皆さんも周りの子どもたちに「あなたはどうしたい?」と優しく問い掛けてみませんか?
(宮城県サポートセンター支援事務所 真壁さおり)


2019年05月27日月曜日


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