<NPOの杜>不登校の子安らぐ場所 まなびの森

学習支援に取り組む「まなびの森」。子どもたちが気持ちを整理して言葉にするプロセスを大切にしている

 病気やけがなどではなく、長期にわたって学校に「行かない」「行けない」不登校の生徒たち。宮城県が2017年度に実施した調査では、不登校の状況にある中学生は2657人に上ります。中学在籍者の4.3%と、全国的にみても高い比率が続いています。
 特徴的なのは中学1年から不登校になる確率が高い点。県は対策として16年度、「みやぎ子どもの心のケアハウス運営支援事業」を開始。本年度は県内27市町で実施しています。
 その一環として、県内の角田市と大河原町で学習塾を開く一般社団法人まなびの森(角田市)は、角田市と山元町の中学校と連携。不登校となった生徒の通学再開を手助けする学習支援を続けています。
 角田市では中学校内外に、山元町では学校外に「学習室」や「ケアハウス」を設置しています。双方とも不登校の子どもたちにとって、家庭と教室の中間的な居場所で、まなびの森のスタッフが運営に協力しています。スタッフの皆さんは、常に子どもを中心に、成長の段階に応じた関わり方を心掛けています。スタッフの判断や考え方を押し付けず、子どもの言葉の端々を丁寧に受け取ります。
 その姿勢が子どもたちに伝わり、安心できる居場所になります。より近い視点で接することで、子どもたちが置かれている家庭や地域の状況が見えてきます。気付いた点を、必要に応じて保護者や先生、専門職と共有し、子どもを取り巻く環境をより豊かにできるよう、協働で取り組んでいます。
 代表理事の坂本一さんは「東日本大震災後に関わった、山元町の子どもたちに対する学習支援活動が基盤になった」と振り返ります。
 仮設住宅の集会所で勉強を教えながら、つらい思いを抱えた子どもたちに出会い、「自分たちは実は『心のケア』をしている」と気付いたそうです。
 ただスタッフは心理や福祉の専門家ではなく、「治療」や「福祉的支援」を担う立場にはない。「学習支援を通し、そばにいる子どもたちが自身の気持ちを言えるようになるまで待つのが自分たちの役割」「様子を見ながら、子どもたちが気持ちを整理して言葉にしていくプロセスが大切」−と学んだそうです。
 坂本さんは「子どもはカナリア」と言います。カナリアはかつて、炭鉱などで有毒ガス発生を敏感に察知することから警報役として使われました。
 「子どもは社会の状況に最初に反応するから、不登校は一つのシグナルではないか」と坂本さん。学校、行政、家庭などの当事者だけが担うのではなく、子どもの思いを社会全体で受け止めていく必要があると考えています。
 まなびの森スタッフの多くは坂本さんの元教え子。一度は社会に出てそれぞれの道を歩んだ上、現在は志を共にする坂本さんと働いています。
 この春には、大学生、大学院生スタッフだった2人が教師となって巣立ちました。ともに中学生の頃から、この教室で過ごし、進学後に教室を支える側に回りました。震災から8年。まなびの森を経て公教育の現場で活躍を始めた若者は計5人となりました。
 「まなびの森」の団体名には、地域に求められる人財を輩出して『ひとのもりをつくりたい』という思いが込められています。「自分の人生、自分で選んでいけるんだよと伝えたい」。坂本さんの言葉が心に響きました。
(宮城県サポートセンター支援事務所 真壁さおり)

一般社団法人まなびの森
宮城県角田市角田扇町5の3
0224(63)5238
https://www.manabinomori.org


2019年06月24日月曜日


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