<とびらを開く>東日本大震災9年座談会(下) 未来へ希望の種まく

発災から9年間と今後について語り合う(左から)真壁さん、新井さん、庄子さん

 今週の「とびらを開く」は先週に引き続き、東日本大震災の被災地支援などに関わってきた3人の関係者による座談会を掲載します。活動の成果を踏まえ、今後の取り組みで求められる視点などを提言していただきました。
(司会は特定非営利活動法人せんだい・みやぎNPOセンターの青木ユカリ常務理事)

 −被災地での活動には今後、何が求められるでしょうか。

 真壁 変化を把握することが大前提。災害公営住宅や集団移転団地の整備進展で、求められるのは被災者に対する「個別支援」から「地域支援」へとフェーズが変わってきました。
 発災当初は孤立したり、生活に困り事を抱えたりした「個人」をどう支えるかが問題でした。それが恒久的な住宅に暮らしが移ったことで、幸せに暮らすには地域をどうしていくのかが課題になりました。被災者による「地域づくり」を支える段階に入ってきたということです。

 庄子 確かに今は、みんなが新たな住まいで幸福に暮らすための活動が必要。復興の先へ、暮らしをつなぐために何が重要かを考えないといけませんね。

 新井 この頃は「被災地の自立」とよく聞きます。でも、そこには「行政が財政難なので、後は住民の皆さんで何とかして」と地域課題を丸投げする傾向も見え隠れします。
 でも、自治会など地域内の住民だけでは全ての課題に対応できない。負担が大き過ぎます。課題に応じてNPOなど外部の力を招き入れて共に活動できるよう、コミュニティーを開くことが大切だと思います。

 −復興へ歩みを進める中で、被災者や支援する側の意識も変わってきました。

 真壁 私たちの活動で言えば、被災者であり被災者を支える側でもある「生活支援員」の皆さんは当初、「支援活動はいつまで続くのか」と、しんどさを口にしていました。
 ところが、発災数年後には、ある支援員さんから「この仕事には終わりがない」という言葉を聞きました。「地域住民が互いに支え合うことは、地域を自分たちでつくることにつながる。ずっと続けていかなくてはならないことだ」とおっしゃった。地道な活動の末に得た「気付き」そのものだと思います。

 −支援活動が地域の未来につながる可能性を生み出したと?

 真壁 その通り。ただし、これからの「地域支援」に求められるものは発災当初の「個別支援」とは異なります。地域を元気にする活動には、合意形成の作業が欠かせません。復興に向けた活動で学び取ったノウハウを地域づくりに生かすことも大切です。

 −未来に向けた地域づくりでは、どんな視点が重要でしょうか。

 新井 「コミュニティーを開く」ということで言えば、平時から進めることに意味があります。例えば、みなし仮設の借り上げ契約時、1人暮らしの高齢者や外国人が入居を断られた問題。家主が誰にでも安心して住宅を提供できる仲介・紹介するサービスを構築しておけば、根本的な解決になります。
 暮らしの安全や安心は、さまざまな人が交わるコミュニティーづくりがあってこそ成り立つ。まさに、地域の多様性をいかに高めていくかが重要でしょう。

 庄子 私は津波被害を受けた仙台市若林区荒浜で、来訪者に荒浜の姿を伝えていますが、「震災復興」の枠組みの中だけで活動を続けるのは大変。(自宅も失った)被災直後からの張り詰めた緊張状態にいるようで、心に負担を感じることがあります。
 少し肩の力を抜くことが必要。震災のことを伝えながらも「震災と関係なしに、その土地にあり続ける魅力を発信していく」と考えれば、負担なく活動を継続できる気がします。
 荒浜は復旧・復興工事が続いていますが、元住民が浜辺に戻ってきた時、がっかりさせないような環境を用意しておきたい。そのためにもまず、諦めずに地道に活動を続けていきます。

 −お話を伺い、9年間にわたる復興の過程で、未来へつながる種がまかれたような印象を受けます。

 真壁 例えば雇用された約1000人の生活支援員は現在約200人まで減りましたが、辞めた方々の中には、地域福祉の専門職となったり、地域の自治組織で役員を務めたりしている人も多くいます。
 人口減と向き合う地域の暮らしに不可欠な人材として、新たなステージで力強く活動を始めている。こうした方々が被災地の希望、宝になると信じています。

■出席者

真壁さおりさん(宮城県サポートセンター支援事務所コーディネーター、社会福祉士)

新井信幸さん(NPO法人つながりデザインセンター・あすと長町副代表理事、東北工大准教授)

庄子隆弘さん(海辺の図書館館長、会社員)


2020年03月09日月曜日


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