<東北の本棚>死を受け入れる姿描く

◎アミターバ無量光明 玄侑宗久 著

 福島県三春町の臨済宗福聚寺住職で芥川賞作家の著者が、臨死体験記録や自身の宗教体験を基に描いた小説。がんに侵され、家族らに見守られながら死を受け入れる主人公の姿をリアルにつづる。2003年に発刊された作品を加筆修正し、復刻した。
 娘夫婦が暮らす東北の町に大阪から移り、そこで夫に先立たれた「私」。80歳を前に肝臓がんで入院し、病の進行とともに夢とは思えない不思議な出来事が起こり、夢の中にも無数の時間が錯綜(さくそう)して現れるように。若き日の夫、自分の姿を見る。
 ある日、僧侶である娘婿に極楽や地獄について尋ねた。極楽浄土は計り知れない存在の意志や思いが実現している場所、膨大なエネルギーがアミターバと呼ばれる浄土を現出しているのかもしれない−などと教わる。すると自分の死が近いことを初めて素直に認める気分になっていた。
 一日中寝ている日が多くなる一方、意識は過去と現実を行き来し、時空を超えた故郷への旅をする。やがて体が発光し、看病してくれた娘にお礼を言おうと見開いた両目に見えたものは…。
 あとがきで著者は「死は個別でありながらやはり一つの普遍でもある。(略)その普遍に通じる何らかの安らぎを見いだして」と願う。
 死との向き合い方を考え、生を見つめ直す時を与えてくれる書だ。
 著者は1956年三春町生まれ。2001年「中陰の花」で芥川賞。
 ケイオス出版(横浜市)がプリントオンデマンドで発行、ネット書店を中心に受注、販売する。1512円。詳細はケイオス出版のホームページに掲載。アドレスはhttps://www.chaos-publishing.com/


2018年09月23日日曜日


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