<東北の本棚>生と死のありよう問う

ペットシッターちいさなあしあと 高森美由紀 著

 ペットの死期を予知し、最期をみとる盛岡市の不思議な会社の若い社長と社員の人間模様や仕事ぶりを軸に据え、生死のありようを問う小説だ。情感を過剰に表出しない抑制された筆致と主人公が生き物の死期が正確に分かるという設定が奏功。生死の際の思いや死と向き合う覚悟などが、静かに深く染み入ってくる。
 「ペットシッターちいさなあしあと」は25歳の斉藤陽太が社長。小学生の時の交通事故がきっかけで、臭いで生き物の死期が分かる特殊な能力が身に付いた。社員は動物の言葉が分かる小島薫と動物に深い愛情を注ぐ柚子川(ゆずかわ)栄輔だ。
 3人はそれぞれの能力を仕事に生かし、話すことのできないペットのけなげな思いを伝えたり、飼い主が心の整理をしたりすることにつなげている。仕事の依頼者はペットとの残された時間を慈しむように過ごし、ペットとの絆や自分の人間関係を見つめ直していく。
 仕事に励んでいた陽太だったが、海外に赴任していた父親が突然、帰国することになる。そこで陽太は父親の異変に気付く。
 死期を正確に予知する力や動物の思いを言語化する力を物語に導入したが、違和感なく人知を超えた世界観を表現。運命との向き合い方を説得力を持って描く筆力が光る。哀切さとぬくもりが漂う作品だが、生き物は必ず死ぬという厳然とした事実を受け止める強さも心に響いてくる。
 著者は1980年青森県三戸町生まれで、同町在住。2014年に「ジャパン・ディグニティ」で第1回暮らしの小説大賞、17年に「花木荘のひとびと」でノベル大賞を受賞している。
 産業編集センター03(5395)6133=1404円。


2018年12月16日日曜日


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