<東北の本棚>心地よい生活環境模索

エイジングフレンドリー・コミュニティ 鈴木七美 著

 人生の最終段階で心身面のサポートが必要になったとき、誰と、どこで暮らすのか。著者は世界各国、日本国内の多様な高齢期の居場所を調査し、全ての人々が心地よく暮らせる環境を意味する「エイジングフレンドリー・コミュニティ」の在り方を考察した。
 ドイツ・ハイデルベルク市では異なる文化的背景を持つ人々がついのすみかを作り出すため、住民自身が多世代共生を目指す集合住居を作った。相互扶助を促す共有の場を巡り、時に対立も起きるが、人々は必要に応じて支え合う。
 多文化社会のカナダには日系、中国系、ユダヤ系など、民族性に配慮した施設がある。いずれも自分たちの文化や習慣を大切にしつつ、外部とつながり、一つの文化に閉じたコミュニティーにならぬよう努力している。
 米国の「継続ケア付きリタイアメントコミュニティ」では、認知症の高齢者を孤立させぬよう、ボランティアが一対一で対面し、語り合う活動を展開する。
 日本では東日本大震災を経験した名取市の介護事業所のケアマネジャーに注目した。被災した家庭など、多様なニーズを持つ高齢者と家族の状況を把握してケアプランを作る過程で、ケアマネジャーは人々の人生の物語に耳を傾ける。その会話の中に支援のヒントがあり、人々の行動、選択に納得や喜びを与えるという。秋田市の事業所では、高齢者の心身の状態に応じて自宅や施設を柔軟に活用する工夫を追った。
 本書は、心地よい生活環境を模索し、実践するには、異世代、異文化を持つ人々との交流が不可欠であり、語りの時空間を持つことは居場所や心地よさを広げることにつながる可能性があると指摘する。
 著者は1958年、仙台市生まれ。東北大薬学部卒業後、製薬会社勤務、京都文教大教授などを経て、現在は国立民族学博物館教授。
 新曜社03(3264)4973=3080円。


2019年10月06日日曜日


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