<東北の本棚>前を向き懸命に生きる

君に届け!希望のトランペット 大野俊三 著

 再起不能と言われた交通事故での大けがと進行性の末期がん−。グラミー賞を2度受賞した世界的なジャズ・トランペッターの著者が2度の危機を乗り越えた人生を振り返る。東日本大震災の被災地を毎年訪れ、支援に取り組む思いも語る。「雨が降らなければ、虹は空に架からない」。不屈の精神で挑戦し続ける著者の言葉は力強く、未来へ向かう子どもたちに勇気と希望を与える。
 1949年岐阜県生まれの著者は小学生の頃からトランペットに憧れ、中学、高校とジャズに夢中になった。「一流のトランペッターになる」と決意したのは高校1年。学校そっちのけでナイトクラブに通い、チャンスあればステージに上がった。そこで出会った音楽の師に導かれ、東京、ニューヨークと活躍の場を広げていく。
 88年に交通事故で、最も大切な唇と歯に大けがを負った。二度と吹けないと言われたが、「トランペットの帝王になる」という目標を支えに必死で練習、4カ月後にステージに戻る。末期の扁桃(へんとう)がんに冒されたのは95年。リンパ節や筋肉を切除して体は衰弱したが、1カ月半後に舞台に立つと決め、実現させた。
 ニューヨークで東日本大震災の発生を知り、4カ月後の7月には被災地に向かい、避難所で演奏を始めた。「今はどんなに辛(つら)くても、希望を失わないでほしい」との思いを言葉にすることは控え、被災者に寄り添うことを心掛けた。最初は悲しみで凍り付いた表情だった人々が、涙と笑顔を見せたという。音楽の持つ力を確信した著者は被災地に足を運び、交流を続ける。
 著者は毎朝、鏡に映る自分と対話する。「大丈夫大丈夫」「最高だ」。くじけそうなときも決して悲観せず、自分を励まし続け、再起を図ってきた。努力し、一生懸命生きることの大切さに気付かされる。
 潮出版社03(3230)0645=1100円。


2019年10月20日日曜日


先頭に戻る