<東北の本棚>近代の名作を捉え直す

最後の一文 半沢幹一 著

 小説の書き出しは印象に残っていても、最後の文章は覚えていない人が多いのではないだろうか。日本語表現学が専門の著者は、作品の全てが集約されている最後の一文に着目し、最初と最後、そして作品名との関係を軸に、50の文学作品について解説する。
 取り上げたのは、主に明治以降の国内の短編小説。小学校の国語教科書に登場する宮沢賢治の「やまなし」は、「小さな谷川の底を写した二枚の青い幻燈です。」で始まり、「私の幻燈はこれでおしまいであります。」で終わる。あとはカニの親子が水底で見た出来事が描かれるだけで、作品設定の説明は一切ない。
 著者は、賢治が最初と最後の一文で、この作品が2枚の幻燈画像から生まれた物語だと示し、読み手に画像を想像させる狙いがあったと説明。作品名は、話に「ヤマがない」ことから遊び心で付けたのではないかと大胆に読み解く。
 「今年は柿の豊年で山の秋が美しい。」と首尾に同一文を反復した川端康成の「有難う」、「それ故(ゆえ)作者は前のところで擱筆(かくひつ)することにした」と、本編ではなく後書きに最も大事なことを記した志賀直哉の「小僧の神様」など、終わり方から近代の名作を捉え直し、新たな視点を与える。
 著者は1954年久慈市生まれ。東北大大学院文学研究科修了。共立女子大教授。
 笠間書院03(3295)1331=1540円。


2019年11月10日日曜日


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