<東北の本棚>仙台藩のお家騒動

家中心殿様も例外なし 平川新 著

 山本周五郎の小説「樅(もみ)の木は残った」に描かれた仙台藩の伊達騒動(寛文事件)は、最も有名なお家騒動だろう。だが、事件で跡目を継いだ4代藩主伊達綱村の治世にも騒動があり、2代続けて強制隠居という結末に。家の存続のためには、ふさわしくない人物は殿様であっても排除された社会の様相が浮かぶ。「家を守る」とはどういうことか、考えさせられる一冊だ。
 2歳で藩主となった綱村は期待を背負い、16歳で親政を開始した。家柄でなく能力本位の人材登用を進め、人心一新を図った。ただ、急激な改革は反発も招いた。「大国を治めるには深い仁愛が大切」「微細なことまで口を出すため、役人が指示待ちになっている」といった批判が繰り返される。感情の起伏の激しい性格や側近政治が災いしたようだ。
 大火による江戸藩邸再建、幕府に命じられた日光東照宮陽明門の修復などで財政は悪化。家臣や領民の負担は増した一方で、綱村は積極的に寺社を造営した。
 一門衆は綱村の隠居願いを、伊達家の親戚でもある幕府高官に提出する。激高しやすくなった綱村は「乱心」したとして、ついに隠居が勧告された。綱村45歳だった。
 綱村は後世、塩釜神社の保護、中尊寺金色堂の修復支援、歴史書「伊達治家記録」の編纂(へんさん)といった文化面の功績が評価される。時代によって違う評価を読み解く鍵が、家にある。下克上の戦国時代に終止符を打った徳川幕府は、社会の安定化を図るために嫡庶長幼の序列を厳密にした。こうして武家の間で確立された家中心の社会秩序は、明治政府に引き継がれ、近代日本の骨格をなしたのだ。
 著者は日本近世史が専門で、宮城学院女子大学長、東北大名誉教授。本著は、大崎八幡宮(仙台市青葉区)が開いた講座シリーズ「仙台・江戸学叢書(そうしょ)」の一つ。
 大崎八幡宮022(234)3606=660円。


2020年03月15日日曜日


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