<東北の本棚>スターの存在 今も励み 

松坂世代、それから 矢崎良一 著

 1998年夏、甲子園で一人の球児が旋風を巻き起こした。松坂大輔。全国高校野球選手権で横浜(神奈川)のエースとして並み居るライバルを豪腕で次々破り、春夏連覇を飾った。野球ファンは同学年を「松坂世代」と呼ぶ。類いまれな才能を持った右腕を中心に運命が動いた元球児たちの22年の歩みを追った。
 本書が扱うのは松坂と15人。そのうちの一人が、仙台(宮城)のエースとして初の甲子園出場を果たした丹野祐樹さんだ。仙台育英、東北の2強を破った快挙は大きな話題となった。
 大きな体を生かした速球で相手をねじ伏せる投げっぷりとは裏腹に、当時を振り返る丹野さんは控えめだ。入学当初は「甲子園なんてとてもとても」と自信がなく、猛練習に耐えて松坂と同じ舞台に立っても「仙台育英に勝ったことで目標は果たしていたんで」と素っ気ない。
 翌年、ドラフト7位指名を受けたヤクルトに入団したが、1軍登板のないまま4年で戦力外に。打撃投手を経て、現在は球団職員として選手のユニホームのクリーニングを担当している。時には早朝から150キロのユニホームを5時間以内に仕上げる過酷な仕事だ。
 日米で活躍し現在も現役を続ける松坂のようにはなれなかった。それでも「あの夏があったからプロ野球選手になれたのだし、(中略)プロ野球のすごさというのも味わうことができました」と誇りを持つ。プロ野球に携わり続ける自分を「本当に幸せだと思います」と言う。
 プロ野球東北楽天からは今季限りの引退を発表した渡辺直人、2軍打撃コーチの後藤武敏、前監督の平石洋介(ソフトバンク1軍打撃コーチ)も登場。一人のスターの存在を励みにさまざまな舞台で奮闘を続ける姿がまぶしい。
 著者は山梨県出身のスポーツライター。主な著書に「松坂世代」「元・巨人」など。(原)

 インプレス03(6837)4600=2420円。


2020年10月18日日曜日


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