<まちかどエッセー・村尾沙織>運命の人

[むらお・さおりさん]コラージュアーティスト。岐阜県生まれ。武蔵野美術大視覚伝達デザイン学科卒業。第1回アルビオンアワード金賞受賞。色鮮やかな和紙を切り貼りして描く独自の貼り絵技法で、生命力のある動物を描いている。全国の百貨店で展覧会を開催しながら、オーダーアートにも取り組んでいる。仙台市若林区在住。

 絵を描いて展覧会を開催していると、その会場で「運命の人」に出会うことがある。
 私が百貨店の展覧会場で在廊していた時のことだ。黒髪で凛(りん)とした瞳の若い女性が、ある一枚の絵の前で立ち止まり、じーっとそこから動かなくなった。
 後ろ姿にそっと声を掛けると、彼女は瞳を輝かせながら振り返った。数日後に遠くの街へ移ることや、新生活にお供する絵が欲しいとぼんやり考えていたら、たまたま通りかかった展覧会場で私の絵を見つけ、目を奪われたことなどを教えてくれた。
 希望に満ちた瞳と七色の羽を持つ鳥の作品に、これから始まる新しい人生のビジョンがピタッと重なったのだそうだ。
 美しき女性のこれからの未来に、自分の絵が関わることができるだなんて、これほどうれしいものはない。と同時に、この作品は間違いなく彼女のために描いたのだと確信した。
 私は絵を発表する時に、その作品がどんな人の元に嫁ぐのかといつも楽しみにしている。というのは、絵筆を持つことでお役に立てる人がいるからこそ、神様からの司令で私は絵を描かされていると思うからだ。作品が「運命の人」と出合う瞬間に立ち合うことは、画家にとってこの上ない喜びなのだ。
 多くの人は「縁を結びたい」と願っている。しかし縁とは自分で結んでいるようで、実はもう結ばれているものではないだろうか。
 だから神様の前で手を合わせる時は、願い事をするのではなく感謝を伝える事にしている。「いつも結んでくれてありがとう」と手を合わせ、今すでにつながっているご縁に感謝をするのだ。
 それは願うというよりも祈る、という感覚に近い。そして祈るということは“委ねる感覚”にも似ている。
 全てのことが必然ならば、私たちは「運命の人」にはもう出会っているし、これからも必ず出会うことになっている。だから探さなくても大丈夫なのだ。
 安心して、目の前の道を歩いて行こう。(コラージュアーティスト)


2018年02月05日月曜日


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