<まちかどエッセー・鈴木英子>日本語の文字

[すずき・えいこさん]公益財団法人宮城県国際化協会日本語講座スーパーバイザー、東北中国帰国者支援・交流センター日本語講師。著書に『漢字授業の作り方』『どんどんつながる漢字練習帳初級・中級』『使って覚える楽しい漢字1・2』などがある。平成26年度「白川静漢字教育賞最優秀賞」受賞。1954年東広島市生まれ。活力の源は大好きなスポーツ。仙台市太白区在住。

 21世紀の現在、世界には6千くらいの言語があるといわれていますが、使われている文字の種類ははるかに少なく、主なものはその100分の1以下というから驚きです。その中で、日本語のように3種類もの文字を使っている言語は他にどのくらいあるのでしょうか。答えはゼロです。
 私たちは、小さい頃から当たり前のように平仮名、片仮名、漢字を習い、アルファベットを加えて4種類もの文字を使って生活していますが、そのような国は世界広しといえども、実は日本だけなのです。
 かつては文字を持っていなかった日本語ですが、後に中国から伝来した漢字を基に平仮名と片仮名が創案され、三つの文字は日本人の生活の中に脈々と息づいてきました。表音文字の仮名と表意文字の漢字をそれぞれ巧みに使い分けてきた先人の知恵を思うと、おのずと尊敬の念が湧いてきます。
 一方、こうした日本語の表記体系を、日本語学習者の立場から考えると…。日本語を学ぶために3種類の文字を習得しなければならないということになります。英語26字、韓国語24字、タイ語42字など他言語の表記と比較しても、平仮名46字、片仮名46字、常用漢字2136字は雲泥の差です。しかも、日本人は義務教育9年間を費やして漢字を身に付けているのですが、学習者は短い期間で覚えなければなりません。
 そのため、学習者によっては、できれば漢字の勉強はしたくないと考える人もいますが、勉学や仕事など、社会の中に根差す活動が多くなるほど、漢字の必要度が高くなり、その習得は避けては通れないものとなるのです。
 ある韓国の女性が、「平仮名を覚え、片仮名も何とか覚えたのに、その上漢字も覚えなければならないと分かったら、悲しくて涙が出た」と話していました。
 初めて漢字に接する日本語学習者にとって、漢字は高い崖に「はしご」を掛けて登るような大変さがあるのです。(公益財団法人宮城県国際化協会日本語講座スーパーバイザー)


2018年05月14日月曜日


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