<まちかどエッセー・鈴木弘二>都市のシンボルとは

[すずき・こうじさん]建築家。61年仙台市生まれ。日大理工学部建築科卒、同大大学院修了。現在、鈴木弘人設計事務所代表取締役社長。日本建築家協会本部理事・副会長、東北支部長。東北大、仙台高専、宮城大で非常勤講師を務めた。仙台藩香道と料理、釣り、ゴルフ、旅行が趣味。仙台市青葉区在住。

 人々が一度は訪ねてみたいと思う都市が世界中にあります。日本では京都、奈良、金沢。外国ではパリ、ローマ、フィレンツェなど枚挙にいとまがありませんが、古代の遺跡、中世の街、近世の街、神殿、教会、宮殿、さまざまな歴史的遺産を持つ魅力的な街が挙げられます。
 例えば、ギリシャのアテネにあるパルテノン神殿ははるか昔から、世界中から人を集める力を持つシンボルであり、アテネに暮らす人々はその恩恵を永遠に受け継いでいます。
 このような都市は、災害や戦争、政変などに繰り返し遭遇しながらも、地元の人々が建築や遺構を大切にし、修復・復元・保存を繰り返し行い、努力して後世に残してきたのです。
 一方、戦火に遭った仙台のように城や城下町などの過去の遺産を失った都市は、何をよりどころにまちづくりを進めるべきかを昔から問われてきました。
 仙台に住む人に「仙台の街のシンボルは?」と尋ねると、多くの方は定禅寺通のケヤキ並木と答えます。「杜の都」のネーミングに近い存在としてケヤキ並木を認識し、春夏秋冬、さまざまなイベントがその下で行われる身近な存在だからでしょう。
 戦後復興計画により、幅の広い道路を有する街区整備がなされ、街路樹としてケヤキが植えられました。これは仙台にとって何よりの救いになりましたが、長い歴史を持ち、これからも発展・拡大する街が、まだ樹齢60年程度のケヤキ並木のみをシンボルにまちづくりを考えることは、少し物足りないように感じます。
 仙台城や大手門などの歴史的建造物の復元・再生を行い、伊達文化の拠点である仙台のまちのアイデンティティーを再構築しアピールすることはもちろん、現在進められている仙台市役所の建て替えや市民音楽ホールなどの計画をケヤキ並木や市民活動と呼応させ、世界に誇れる独創的な建築を創造する。
 総合的な「杜の都仙台」のシンボル化を推し進め、市民に愛され、後世への遺産となるまちづくりを進めていくべきであると考えます。(建築家)


2018年06月18日月曜日


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